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自分ではどうしようもないこと

往来庵の菊地克仁です。
いつも私のメルマガをお読みいただき、
どうもありがとうございます。


今回は今から30数年ほど前、
私が東南アジアのある国に
仕事で赴任していた頃の話です。



当時はまだ治安上の問題もあり、
会社の車でオフィスに通う毎日でした。


大きな交差点で車が止まると、
自身の背丈ぐらいある新聞の束を
脇に抱えた新聞売りの小さな女の子が、
交差点の中に入ってきて、
「買って」と言わんばかりに、
トントンと車の窓ガラスを叩きにきます。


今でもよく覚えているのですが、

彼女は裸足で、すすけたピンクのワンピース姿

でした。


年の頃は恐らく2歳半~3歳ぐらいです。

ちょうど日本にいる私の娘ぐらいだった
ので、
その時の情景は鮮明に覚えています。


当時の現地の新聞は、
日本円で換算すると、
数十円にも満たなかったかもしれません。


一生懸命になって新聞を売っている少女を
車の中から見て、
日本円で千円分のお金と交換に、
新聞をもらおうとしたときです。


同乗していた現地スタッフから
次のように言われました。


「ここで彼女に千円あげると、
次から日本人だと思うと、
どんどん交差点の中に入って来て、
あの子はとても危険な状態になります。
だからやめた方がいいですよ。」


さらに、
私がいくらその子にお金をあげても、
この子には一銭も入らない、
ということも教わりました。

新聞売りの子供たちの元締めがいて、
そこから彼女は賃金をもらって、
新聞を売っているのです。


多分、
一日中新聞を売り続けても、
日本円で数十円だったと思います。


当時の現地では、
小学校にすら通えずに、
朝から新聞売りをしている子供たちを、
街角でたくさん見かけました。


「将来、彼らはどうなるのかなぁ…」
などと思いつつ、
毎朝私は後部座席で、
腕を組んで寝たフリをし続けました。



「こういった現状は絶対におかしい!」
などとはわかっていても、

「何もしてやれない自分の無力さ」

を嫌というほど感じました。


それを毎朝の通勤時間で味わったのです。
辛い経験でした。


 

きっと当時のこの国では、
誰も悪くはなかったのでしょう。


誰のことも責められない状態ですが、
ただそういった
「眼をそむけたくなる現実」
というものが目の前にあったのです。


例えば、

「自分の力を貸せば何とかなる!」

という何らかの手立てがあれば、
手の打ちようもあります。


が、
このときは、

「目の前のどうしようもない現実」

に対して、

「非力の自分」「見て向ぬふりしかできない自分」

というものを嫌というほど味わいました。

 


帰国後、
このときのことを思い出すたびに、
「あのときの自分に何ができただろうか?」
と冷静な気持ちで自分に問い直すのですが、
結局答えは何も見つかりませんでした。


こんな形で、
当時、

現実に目を背けることしかできない経験

をしました。

 

「こういう世界をなくそう!」
と言うのは簡単かもしれませんが、
「じゃあ、そのために何をするの?」
と問われたら、

自分ひとりの力ではどうにもならないことが
今の日本の中にも、
実はたくさんあるように思います。



言い古された表現ですが、
何か変だなと気がついたときに、

「できることから少しづつやっていく」

という世界が、
今の日本にもあると思います。

 

今回は、
昔の写真を見ながら、
思い出したことをお伝えしました。


こうした厳しい現実の話題に限らず、

「で…!?私はどうするの?」

という自らへの問いかけは、
いつも必要な姿勢だと感じさせられます。



今回は、
少し暗い話題になってしまいましたが、
最後まで私のメルマガをお読みいただき、
どうもありがとうございました。


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