自然派ドクター 髙野弘之

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禁じられた『罪』をおかす(1)

今年の春に行われた医師国家試験で
次のような設問がありました。

【説明として適切なのはどれか】

28歳の初妊婦(1妊0産)。
妊娠12週に自宅近くの診療所で実施した
血液検査で異常を指摘され、妊娠16週に
紹介され受診した。検査結果を表に示す。

[検査項目] [計測値][基準値] 
風疹抗体    8倍未満 8倍未満
HTLV-1抗体 陽性 陰性
トキソプラズマ抗体 320倍 160倍未満
RPR      32倍 1倍未満
TPHA 640倍 80倍未満
C型肝炎ウイルス抗体 陽性 陰性

a「風疹ワクチンを接種しましょう」
b「成人T細胞白血病ウイルス感染の精密検査が必要です」
c「トキソプラズマの母子感染のリスクはありません」
d「梅毒に感染している可能性はありません」
e「出産後、赤ちゃんにC型肝炎ウイルスのワクチンを接種しましょう」

【ネットに載っていた解答と解説】

正解は b

(a)風疹抗体は8倍未満であり、確かに
低抗体価である(基準値を満たしている
から大丈夫というわけではないので注意)
しかしながら、風疹ワクチンは生ワクチン
であり妊娠中の接種は禁忌。
分娩後早期にワクチン接種を推奨すべきだ。
★禁忌肢の可能性あり★

(b)正しい。HTLV-1抗体が陽性なので
精密検査を行いたい。

(c)トキソプラズマは母子感染リスクあり。

(d)RPR・TPHAともに異常値を呈しており
梅毒に感染していると考えられる。

(e)今のところC型肝炎に対する
ワクチンは存在しない。

【禁忌とは】

上記の問題は
(b)が正解だとは思いませんが
国家試験につつがなく合格するためには
(b) を選べばいいのは分かります。

成人T細胞白血病ウイルスに関しては
ひとかたならぬ思い入れがあるので
そのうち、じっくり語らせてください。

それは置いといて
風疹ワクチンのところで出てくる
禁忌という単語です。

「禁忌」っていうのは宗教的なタブー
のようなニュアンスの専門用語ですが
医療の世界では
患者さんを危険にさらすので
絶対にやってはいけないこと
の意味です。

妊娠中に生ワクチンは
絶対に射ってはいけないので
上記(a)は「禁忌肢」ではないか
と予想されています。

わたし達が国家試験を受けたころは
無かった設定なのですが
問題の中に潜ませてある
「禁忌肢」を3-4個選んでしまうと
他の問題を全問正解していても
(そんなチョイスをするやつは
患者さんを危険に陥れる恐れがあるので)
不合格にされる、という仕組みです。
禁忌肢を4個も選ぶ人が他の問題を
全問正答できるわけはないのですが(笑)

どれが地雷かは試験後にも
公表されるわけではないので
問題を見た人達が毎年推察して
国試対策をしています。

【タブーをおかしている医者は多い】

そのような試験を潜りぬけて
医者になった人達でも
いとも簡単に禁忌であることを
やっていたりするので
注意が必要です。

今まで一話完結になるように
努めてきましたが
禁忌に関しては
何回かに分けて書きますね。

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