自然派ドクター 髙野弘之

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『風土病』ではない

出身校である自治医大(栃木県)は
学費が全くかからないかわりに
医者になってからは自身の出身県に戻り
普通の医者が行きたがらない
山奥とか離島とかの病院に
義務年限(在学期間の1.5倍)の間
勤務しなければならない
というシステムでした。

生まれも育ちも佐世保市の
わたしは卒業後に
長崎空港近く(大村市)の
中核病院で2年間の研修医生活をした後に
ずっと長崎県の離島である対馬と五島の病院
で勤務医をしていました。

長崎県って、面積は47都道府県中37位なのに
海岸線の長さは北海道に次いで2位!
(北方領土を入れなければ長崎が1位)と
いう大小さまざまな島だらけの県なのですが
その中でも大きな2つの島に行っていたので
Drコトーみたいな一人っきりの診療所ではなく
中規模の総合病院での仕事でした。

【対馬と五島の違い】

対馬の病院も五島の病院も
対象人口が2万数千人くらいで
入院病床が150床と
ちょうど同じくらいの規模の病院でした。

受診する患者さんの病気の種類も
人数も似たようなものでしたが
明らかな違いが一点ありました。

上五島には精神科の患者があまり居ないのに
対馬には精神疾患が多いのです‥

【精神疾患の多さ】

当直をしていると
夜中に「眠れないので睡眠薬を出してください」とか
「気分が落ち着かないのでなんとかして欲しい」とか
いう理由で受診する人が上五島では皆無だった
(もちろん全くゼロではないけれど、自分の印象では
皆無に近かった)のに、対馬ではそういう訴えで
夜間に相談を受けることが多かったのです。
カルテを見ると、既に1ページに
収まりきれないくらいの精神薬が処方されているので
これ以上どうしたらいいか分からずに
精神科医に助けを求めて電話する、ということが
何回あったか分りません。
当直の仕事が一段落して
やっと布団に入った寝入りばなに
患者さんから電話がかかってきて
ただ話を聴いて欲しいという要求に
答える夜もどれだけあったことか。

島で勤務している頃は
対馬にはそういう病気が多い土壌があり
そういう血脈が流れているんだろうとか
対馬の風土病みたいなものなのだろう
と失礼な解釈をしていました。

対馬には精神科の患者が多いから
精神科医が3人もいて
上五島には精神疾患が少ないから
精神科医がいないし精神科の
入院病床も無いのだと思っていたのです。

【医者が病気を作ってる】

賢明な皆さんなら、もうお分かりですね!

原因と結果が逆なのです。

対馬には精神科医が常駐していたから
精神疾患が多く当直医も悩まされ

上五島には精神科医が居なかったから
精神疾患が少なく当直が楽だったのです。

上五島に居た頃に
「こんな時に精神科の先生が居てくれたらなぁ…」
なって思ったこと、一度もありませんから。

こんな分かりやすいことだったりするのに
そこに居る間は気付かないものなのです。

精神科に限らず、医者に病気のレッテルを貼られ
薬でホンモノの病気にされている人
結構多いですから皆様はお気を付けくださいませ。

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