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第74話 皮膚のブドウ球菌を減らすために皮膚pHを下げろ!
第74話 皮膚のブドウ球菌を減らすために皮膚pHを下げろ!
まず初めに知っておくべき3つの論文
1)アトピーのヒトの皮膚には皮膚ボロボロ菌である黄色ブドウ球菌(S.aureus)がめちゃくちゃいるってことがわかっている。
2)アトピーの赤ちゃんの皮膚が悪化した時には皮膚ボロボロ菌の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の割合がドカンと増えることが報告(H.H, Kong et al.,2012)されている。
3)アトピーのヒトの皮膚pHは、健康な人よりも高くて、皮膚炎が悪化につれて皮膚pHもグングン上昇し、それに伴って皮膚ボロボロ菌の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の数も増加することが報告(日本皮膚科学会雑誌、110、19-25、2000)されている。
一般的に、ヒトの皮膚pH(水素イオン濃度)は、正常であればの弱酸性(4.5~6.5)であり、このバランスが乱れてくると、肌がざらついたり、くすんだり、ニキビや吹き出物が出やすくなるし、カサカサする。
じゃあどうしたらいいか?
皮膚表面を酸性に保つことによって、二次感染を防止しているというアシッドマントル理論(Acid mantle of the skin) が報告(Schmid MH et al 1995)ってのがあって、皮膚pHが下がると細菌の増殖速度が下がるって法則がある。
さらに、エモリエント(保湿)を使うと、なんと、皮膚ボロボロ菌が減るって衝撃的な論文もある。
つまりエモリエント(保湿)はバリア機能改善と皮膚ボロボロ菌をはじめとする皮膚細菌の改善の両方のメリットがあるぜ
まとめ
民間人の居住地を無差別に爆撃するような抗菌剤の使用ではなく、皮膚細菌を標的とした静菌的な治療戦略が必要だ。
エモリエント(保湿)は皮膚バリア機能改善とマイクロバイオームに同時にアプローチできるため特にアトピー性皮膚炎の犬に対する意義は大きい。
どうやら皮膚pHはできるだけ酸性に傾けるスキンケアが必要になってくるってことだ。
水素イオンが配合された水素クリームは臨床現場でも美意識高い系の30-60代の飼い主様からの評価が高く、まるで若い女子高生たちにおけるKing & PrinceやBTSのような存在になりつつある。
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あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。
犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)を用いた補完治療法の確立」
を目指しています。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
実際に臨床現場の最前線で、有効な菌を与え(プロバイオティクス)、その菌を育てる(プレバイオティクス)ことで腸壁に住む細菌のアンバランス(dysbiosis)を元に戻すと痒いという症状が結構改善していく動物たちを目の前でみて、やはりそのキープレイヤーとなるのは菌だと感じています。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明している。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して殺菌という空爆で有用菌まで無差別に爆撃することのないように静菌制御して、動物達の腸管内や皮膚表面に暮らす細菌たちの潜在能力に期待するとともに、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…
文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
東京動物アレルギーセンター
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