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第9話 妊娠したら乳酸菌を飲め!〜「ヒトのアトピー」と「腸内フローラ」の関係〜

第9話 妊娠したら乳酸菌を飲め!〜「ヒトのアトピー」と「腸内フローラ」の関係〜

・エストニアとスウェーデンの2才の子供の腸内フローラを調べたら、アレルギーの子供では健康な子供に比べて乳酸菌(乳酸桿菌)が少なかった。(Bjorksten B et al .Clin Exp Allergy 1999)

・アレルギーを発症する子供は生後1ヶ月時でのエンテロコッカスやビフィズス菌が少なかった。(Bjorksten B et al J Allergy Clin Immunol 2001)

・アトピーとなる子供では生後3週間の時点でビフィズス菌が少ない傾向だった。Kalliomaki M et al.J Allergy Clin  2001)

・小児アトピー性皮膚炎のリスクを調べたところ、特定の細菌(ビフィドバクテリウム、アッカーマンシア、およびフェカリバクテリウム)が低く、特定の菌(カンジダおよびロドトルラ)が高かった。(Fujimura KE et al. Nat Med. 2016)

・オランダとドイツの共同研究チームによると606名のアレルギー素因をもつ親から生まれた新生児を対象に調査したところ、兄弟数が多いと乳酸菌やバクテロイデスの割合が増え、反対にアトピーの発症リスクと関連するクロストリジウム属の細菌は減っていることがわかった。

これらの研究をまとめるとアレルギーの子供は
1)ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の絶対数が少ない
2)善玉菌に対する悪玉菌が相対的に増えている
という傾向があり腸内細菌がアトピー性皮膚炎の発症に関連する可能性が示されています。


じゃあどうしたらいいか?という論文を探してみると、

・アトピー素因を持つ159名の妊婦とその乳児にラムノーサス菌(Lactobacillus rhamnosus)もしくは何の効果もない粉の入ったカプセル(プラセボ)のどちらかを飲ませたところ、4才時の子供のアトピー性皮膚炎の発症率は、ラムノーサス菌を飲ませて方がプラセボ(偽薬)に比べてマジで低かったことが明らかとなり、乳酸菌の投与がアトピー性皮膚炎の発症を抑制する可能性がありそうじゃん。(Kalliomaki M et al.Lancet 2003)

・1,223名のアトピー素因を持つ妊婦に分娩前2-4週間、カプセルに入れたラムノーサス菌、ビフィズス菌、プロピオニバクテリウム菌を飲ませたところ、プラセボ(偽薬)を飲んだ妊婦から生まれた子供よりアトピー性皮膚炎の発症が明らかに低いじゃん。(Kukkonen K et al. J Allergy Clin Immunol 2007)

・善玉菌を含む乳酸菌サプリメントなどプロバイオティクスと腸内細菌の餌となるケストースや食物繊維などプレバイオティクスとを組み合わせたシンバイオティクスを摂取すると、アトピー性皮膚炎の予防と治療に効果が期待できそうじゃん。

・デンマークの研究(二重盲検・クロスオーバー)ではラムノーサス菌(Lactobacillus rhamnosus) と ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri )の 組 み 合 わ せ がアトピー性皮膚炎に効果的であったじゃん。(Rosenfeldt V et al. J Allergy Clin Immunol 2003)

・オーストラリアの研究(二重盲検・クロスオーバー)でも中等度から重症のアトピー性皮膚炎の子供56人を対象にファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)またはプラセボ(偽薬)を 8 週間にて投 与した結果、明らかに効果がファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)に効果があったよ。(Weston S et al. Arch Dis Child 2005)

コメント
アトピー性皮膚炎の予防としては妊娠後期から産後まで母親が善玉菌を含むプロバイオティクスや善玉菌の餌となるケストースや食物繊維などを摂取することは体にも優しく、アトピー性皮膚炎の予防法として期待ができそうです。

あとがき
「なぜこのメルマガを始めたか?」1番の理由は、「診察室では伝えきれない情報を伝えたいから」で、コンセプトは、「ヒトとペットの健康に関わる役立つ最新海外論文を独断と偏見でピックアップして翻訳して届ける」です。
中学2年生でも理解できるような言葉で噛み砕いてわかりやすく表現することにコミットします。特に腸内細菌には興味が尽きないので鋭くメスを入れます。動物病院で犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを毎日診断・治療して、ワンちゃんに合ったオーダーメイドの乳酸菌を飲むと症状が改善していくのをみて、まだアレルギーになる前に腸内細菌をバンバン刺激すれば、そもそもアレルギーを予防できるんじゃないの?と妄想しつつ、ペットのアレルギー0社会がつくれないかという思いが非常に強くあります。そんな想いを山手線でいうと中目黒ー品川区間、在来線でいうと梅田駅ー新大阪駅区間でも読めるくらいにコンパクトにまとめて発信します。

東京動物アレルギーセンター 
センター長 
日本獣医皮膚科学会認定医
獣医学博士 川野浩志

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