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第36話 ビフィズス菌とヒトのアトピー (前編)

第36話 ビフィズス菌とヒトのアトピー (前編)

赤ちゃんがお母さんのオッパイを飲むと赤ちゃんの腸管にはすぐにビフィズス菌が優勢な腸内フローラが作られます。この理由は、「母乳にだけ含まれるビフィズス菌をガツンと増やす”ヒトミ ルクオリゴ糖(human milk oligosaccharide, HMO)”が含まれているから」です。実際に、100%オッパイでスクスク育った赤ちゃんは粉ミルクで育った赤ちゃんよりもビフィズス菌が多いことがわかっています(Chihaya Yamada et al. 2017)。

ビフィズス菌ってどんな菌だったっけ?っていうと、糖を食べて、「乳酸」「酢酸」という酸を出す菌です。だからオッパイを飲んだ赤ちゃんの腸内は酸性になり、大腸菌や他の病原性腸内細菌は増殖しにくくなるってわけ。実際にビフィズス菌による腸管出血性大腸菌(O157)の感染を予防する福田らの報告がある。どんな研究かというと腸管に菌がいないマウスに大腸菌(O157)を感染させるとマウスは死にますが、腸管内にビフィズス菌をがっつりブッこんでおいたマウスに大腸菌(O157)を感染させてもマウスは死なない。

さて、80年代のアイドルと言えば松田聖子(赤いスイトピー)、中森明菜(北ウイング)、松本伊代(センチメンタルジャーニー)、石川ひとみ(まちぶせ)、小泉今日子(学園天国)ですが、
ヒト腸管に棲息する種類のビフィズス菌(HRB, Human-Residential Bifidobacteria)と言えば

・ビフィダム菌(B. bifidum)
・インファンティス菌(B. infantis)
・ブレーベ(菌B. breve)
・アドレッセンティス菌(B. adolescentis)
・ロンガム菌(B. longum)
・シュードカテヌラタム菌(B.pseudocatenulatum)
などがいます(Yoshioka H et al 1991)。

これらのビフィズス菌は年代別で異なり、

ヒトの乳児によくいるビフィズス菌
・ブレーべ菌(B.breve)
・インファンティス菌(B.Infantis)
・ビフィダム菌(B.bifidum)

ヒトの乳児にも成人にもいるビフィズス菌
・ロンガム菌(B.longum ssp.longum)

ヒトの成人(おっさんやおばさん)によくいるビフィズス菌
・アドルスセンティス菌(B.adolescentis)
・シュードカテヌラタム菌(B.pseudocatenulatum)

となっています。実際にこれらのビフィズス菌に関する論文はめちゃくちゃあります。理解できない暗号が登場して読む気がなくなるので、先にアトピーという病態のおさらいです。

「アトピーとは誤解をおそれずズバッと言うと、暴走族がバイクで信号無視して暴走行為を繰り返している状態です。さらに詳しく攻めると、アトピーとは、Th2型ヘルパーT細胞と言う主犯格が金属バット(IL-4)や鉄パイプ(IL-31)といった凶器(Th2サイトカイン)を持った暴走族をイメージします。乳酸菌やビフィズス菌は凶悪な暴走族のバイクの暴走行為を止める機動隊(制御性T細胞:Treg) が警棒(IL-10)を使って制圧する感じです。」

後編ではビフィズス菌に関する学術論文をルーズソックスを履いた女子高生が解説したらどうなるか?というコンセプトでお届けします。

あとがき
このメルマガは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。
特に腸内細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、ペット合ったオーダーメイドの乳酸菌を飲むとによって腸内の細菌のバランスを元に戻してあげることによって痒いという症状が改善していくの目の前でみて、やはりカギとなるのは菌だと感じています。そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…

文責
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名古屋動物アレルギーセンター

川野 浩志(獣医師 獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医

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