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第71話 キスで口腔内細菌は移るのか?



第71話 キスで口腔内細菌は移るのか?

 

2014年にMicrobiomeというジャーナルに掲載されたオランダの研究グループの「Shaping the oral microbiota through intimate kissing」という論文(Remco Kort et al.2014)によると、カップルがキスをする時間が長くなり、頻繁になるほど、口腔内細菌は互いに似てくることがわかっています。

<方法>
まず、21組のカップル(女性1組と男性1組の同性愛者のカップルを含む)のキスの前後の唾液をサンプリングして唾液中の口腔内細菌を解析した。
次に彼女に乳酸菌やビフィズス菌が配合されたヨーグルトを飲ませた後にキスをした彼氏の唾液をサンプリングして口腔内細菌を解析した。

<結果>
・彼女がヨールグルトを食べた後に10秒間キスをした彼氏の唾液中の口腔内細菌は3倍に増えた。
・1回のキスをする間に8000万個の口腔内細菌が移された。

<結論>
・1日に9回以上の濃厚キスをする場合と最新のキスから1.5時間以内はその2人の口腔内細菌はほぼ同じになる
・10秒間のキスの間に8000万以上の口腔内細菌が交換される

<個人的な感想>
医学的には、キスは唾液を交換させる行為です。キスにより口腔内細菌のダイバーシティー(多様性)を高めることで、微生物に対する免疫力を高めるでプロバイオティクス的に重要なことです。
(ただ健康上の利点は、キスする人の相手の口腔内細菌のタイプによって左右されることを補足します)

さらに、夫から妻に歯周病原菌が感染するかどうかを評価した2012年に発表されたComparison of periodontal microbiological patterns in Italian spousesという論文(F S Martelli et al.2012)によると、イタリアの9組の夫婦の歯周病病原菌をリアルタイムPCRで測定した結果、
1)夫妻の間で口腔微生物叢は非常に類似した組成示した。
2)歯周病菌は夫婦で水平感染する。

その他、論文報告があるエビデンス
・子供の口腔内細菌の菌叢は、他の親と比べて明らかに自分のお母さんと類似性がある。
・妻と妻以外の他人(同姓、異性)で比較すると夫婦同士の方が口腔内細菌の類似性が高い。
・夫婦に共通する口腔内細菌の割合は、親子同士より高い(親子より夫婦の方が菌叢の類似性が高い)
・18~20歳のキスは「相手の歯周病菌と一生過ごす」という覚悟を持つ必要がある。
・20歳を過ぎれば、バンバンキスしても良い。20歳を過ぎれば相手の歯周病菌が入っても、一定期間しか存在せず、定着することはない。
・「結婚したての新婚夫婦」では、口腔内細菌の種類は似て来るけど、結婚年数が上がると少しずつ変化し、さらに経つと全く別の種類になる(キスで相手の菌が移っても、キスの機会が減るに従って常在菌以外は定着せずにいなくなる)
・同棲カップルの皮膚と腸管内マイクロバイオータがよく似ている(Kimberly A Dill-McFarland et al.2019)





あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。

犬アトピー性皮膚炎の治療戦略としてプロバイオティクス(有益な生きた細菌)とプレバイオティクス(有益な細菌のエサ)の可能性にフォーカスしています。
実際に臨床現場の最前線で、有効な菌を与え(プロバイオティクス)、その菌を育てる(プレバイオティクス)ことで腸壁に住む細菌のアンバランス(dysbiosis)を元に戻すと痒いという症状が結構改善していく動物たちを目の前でみて、やはりそのキープレイヤーとなるのは菌だと感じています。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明している。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して殺菌という空爆で有用菌まで爆撃することのないように静菌制御して、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…

文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
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