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第84話 腸内細菌たちの負けられない戦い
第84話 腸内細菌たちの負けられない戦い
元々ヒトの腸内に住んでいる最も重要なエンジェル菌(有用な働きをする腸内細菌)は「ビフィズス菌」と「酪酸産生菌」だろう。
一方で病気になると増えるデビル菌の代表格といえばクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)やフソバクテリウムだろう
じゃあ、どうしたらビフィズス菌が増えるか?
腸に住む細菌の好物はなんといってもブドウ糖だ。でもブドウ糖は小腸で吸収されるから大腸で待っていても残念ながら届かない。ブドウ糖がつながりまくった”デンプン”も消化酵素でブドウ糖に分解されて小腸から吸収される。
ケストース(ブドウ糖+果糖+果糖の3糖類)やラフィノース(ブドウ糖+ガラクトース+ガラクトースの3糖類)は大腸で善玉菌だけがもってる酵素でブチっと切れてバラバラになったブドウ糖が腸に住む細菌たちの餌になる。
イヌリンのようにたくさんつがっててると腸管細菌的にも分解作業が大変で辛いから、大腸まで届く1番低分子のオリゴ糖(3糖類)が最も効率的に腸に住む細菌の餌として利用できるって訳だ。
だから、ケストース(3糖類)は最も理に叶ってる。
しかも善玉菌だけが、オリゴ糖を分解する酵素を持っている。つまり、善玉菌はでんぷん、オリゴ糖、食物繊維を分解する酵素を持っているけど、悪玉菌は酵素を持っていないから食べたくても食べれない。
だから悪玉菌は肉(アミノ酸)を好む。
ビフィズス菌は食物繊維やオリゴ糖をモリモリ食べて増えるだけじゃなく、分解酵素をドバッと出して,デンプン(ブドウ糖がたくさん繋がった状態)を分解してオリゴ糖(ブドウ糖が3-10個繋がった状態)にした後にバクバク食べる(Crociani, F. et al. 1994)。特に冷や飯など消化酵素で分解されにくくなった難消化性デンプン(レジスタントスターチ)は,大腸で待っているビフィズス菌を増やすことができる。
様々な食物繊維に対応できる武器(分解酵素)を持っているビフィズス菌にとって、オリゴ糖の分解など朝飯前で、腸内細菌は分解酵素という”武器”を使い分け,他の腸内細菌と競争しながら効率良く食物繊維やオリゴ糖を分解代謝している。 絶対に負けられない戦いがここにもある。
食物繊維を分解できる腸内細菌は,ビフィズス菌だけでなく痩せ菌(Bacteroides 属細菌)もそうだ。
一方で、酪酸産生菌を増やすのに有効なのは、海藻や果物、コンニャクなどに含まれる水溶性食物繊維だ。さらに難消化性デンプンも酪酸産生菌のエサになる。
プロ野球にセ・リーグとパ・リーグがあるように食物繊維は水に溶ける水溶性と水に溶けない不溶性がある。
水溶性食物繊維は, 一般にネバネバしてヌルヌルした成分で、ペクチン(果物、野菜)、アルギン酸ナトリウム(昆布、ひじき, ワカメな どの海藻類)、グアガム(豆類)、グルコマンナ ン(こんにゃく)、コンドロイチン硫酸(サメのひれ)、ポリデキストロースなどがある。
不溶性食物繊維には、セルロース、ヘミセルロ ース(豆類、野菜、穀類のふすま、米ぬか)、リグニン(ココア、豆類、にんじん、穀類のふすま)、イヌリン(ゴボウ、キクイモ)、アガロース、アガロペクチン(寒天)、キチン(エビやカニの殻), コラーゲン(動物の腱、骨)などがある。
やっぱ食物繊維やオリゴ糖が豊富な食事をバランス良く取ることで腸内細菌叢を健全に維持することができる。オリゴ糖と食物繊維のどちらか効率よく腸内細菌に食べられるかるといえばズバリ答えはオリゴ糖だ。
実際に食べ過ぎたニラはウンチに出るけど、オリゴ糖がウンチに出ることはない。
あなたが食べたいものを食べるのではなく腸内細菌にエサを与える気持ちで腸内細菌が喜ぶ食事を考えてみてはいかがだろう
あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。
アレルギーで苦しむ動物と何も出来ず彷徨ってる飼い主さんのために犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)による腸内環境の改善に加え、酸化ストレスの緩和により免疫抑制剤から解放され、尾崎豊じゃないけど戦いから卒業することを目指しています。免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みが、腸内環境改善を改善するために乳酸菌クラスター爆弾を腸管内(大腸)に投下して、腸壁に住む細菌たちアンバランス(dysbiosis)をチューニング(整頓)すると、免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みがチャラになる動物たちを目の前で見せてもらい、生命体の無限の可能性を教えてもらい、そのキープレイヤーとなるのはやはり菌だと感じています。だから僕はアレルギーを出来るだけ薬物に頼らず治療したいという方に対する解決策、治療オプションを提案したいと思います。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明しています。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して力ずつのアプローチ・抗菌薬による殺菌という空爆で有用菌まで無差別に爆撃することのないように静菌制御して、動物達の腸管内や皮膚表面に暮らす細菌たちの潜在能力に期待するとともに、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。
この想いがアレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんに届きますように…
文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
全日本暴猫連合なめんなよ 親衛隊長(公認)
・東京動物アレルギーセンター
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東京動物アレルギーセンター(https://taac.jp)
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