ツリーベル教育研究所  【すーさんの学校】

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112【すーさんの学校】試合に負けたけど「ありがとう」

 中学時代に指導した野球部の生徒が、高校3年生で甲子園を目指して野球を続けた生徒も多いです。
甲子園に行った生徒もいるが、行けなかった生徒の方がはるかに多いのは、当たり前のことです。
 勝負は、必ず勝者と敗者に分かれます。
夏の甲子園、たったの一度も負けないチームは一つだけです。
どんなチームであろうと、負けたくて負けるチームはいません。
勝だけが目標でないといっても、やっぱり勝ちたいものですよね。
勝負の世界だから・・・
 今から、約10年前の夏の中体連地区予選(軟式野球)の話で、忘れられないことがありました。
負けてしまったら、これまでのすべてが終わります。
1回戦、0-1のスコアーで負けてしまいました。
3年生9人のチームで戦い、やることはやりました。
大事な場面での一本がでませんでした。
これが勝負の世界だから仕方がないです。
負ける時は、こんなもんですよね。
 試合が終わり、選手は泣きながら野球道具を片付けていました。
そのまま、道具をもって、球場に礼をして球場から出てきました。
こんな時は、どんな言葉を掛けようか、どんな言葉でしめようか悩んでしまいます。
それでも、球場から出てきた後に話をしないといけないのが、指導者の責任でもあります。
 そんな時でした。
球場からでてくる選手に向かって、ある保護者が泣きながら言った言葉があります。
泣いている選手に「ありがとう」「ありがとう」でした。
気持ちは、よくわかりました。
しかし、負けた直後に「ありがとう」とは、なかなか言える言葉ではありません。
「よく頑張ったね。良い試合だった」というのが今までのパターンでした。
悔いのない良い試合だったということもありますが、今ままでやって来たことが、走馬燈のように頭をよぎったのでしょう。
 保護者から「ありがとう」の言葉を聞いたとき、指導してきたことが間違っていないと思いました。
こんなことは、後にも先にもはじめてでした。
幸せでした。
試合に負けて、保護者から、「ありがとうございました」と言われることは今までにもたくさんありました。
しかし、負けて泣いている選手に言えるのは、選手が感動してくれる野球をしてきたからだろうと思います。

 何のために、野球をするのか、誰のために野球をするのかをずっと問いかけてきました。
その答えを出してくれた瞬間だったと思います。
あの光景をきっと忘れることはないでしょう。
「ありがとう」

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