ステロイド剤で痒みの感受性が高くなる

前回のブログではアトピー性皮膚炎のデメリットゾーンにある時、ステロイドを使用し続けるとどういった影響があるのか、という事のお話でした。

今回はステロイドを使用し続けた場合、その様な影響があるのかを医学論文と実例をご紹介していきます。


順天堂大学から発表されました論文(※1、2)では、痒みを感じる神経線維は、角質層内の乾燥などによって、本来の真皮内から角質層内に伸びてくることで、皮膚への外部からの刺激などを痒みとして感じやすくなることが述べられています。


ステロイド剤の副作用には皮膚の刺激感が強くなる、といったものがあるのですが、これはこうした痒みを感じる神経線維の影響なども考えられます。

また、感染症などによるバリア機能の低下は、角質層の水分蒸散量を高めることになり、角質層の乾燥から同様の状況を生むことがあります。


こうした痒みを感じる神経線維を刺激する事による痒みの場合、ステロイド剤のような免疫を抑える作用による抗炎症効果は、痒みを抑える作用機序が異なるために、十分に得ることができません。


もちろん、痒みの神経線維を刺激して生じた痒みにより掻き壊しが生じましたら、炎症も同時に生じることになるので、そうした二次的な炎症から生じる痒みに対して効果を現すのですが、元の刺激を受けた神経線維から伝わる痒みを全て抑えることはできません


ステロイド剤を使ったとしても、なかなか痒みが治まらないケースの中には、機能的異常としてこうした角質層内の神経線維が関わっている事があります。


※1:Topical application of emollients prevents dry skin-inducible intraepidermal nerve growth in acetone-treated mice.J Dermatol Sci.2011 May;62(2):141.

※2:アトピー性皮膚炎と皮膚感覚受容器 顕微鏡 vol 46,NO.4(2011)




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