加藤眞悟

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新作能「長崎の郵便配達」

2025.08.11.

加藤美紀です。昨日(8.10.)に書いたものをお送りします。
昨晩、広島での公演を終え、主人が帰宅しました。この作品は長崎の被爆者である谷口稜曄さんという方の体験を取り上げています。大倉正之助さんが書き上げた原稿を川瀬監督と加藤とわたしも加わって拙宅の和室で検討しました。その後、演者の方々で何度も打ち合わせをし稽古をして、新作能初演の福岡公演、広島公演に至りました。
原爆を扱った新作能はわたしには初めてで、言葉の言い回しについてわたしの意見を聞かれたことも初めてでした。また、この数年は年齢のせいかわかりませんが、今の日本を創りあげた先人たち、先の大戦で亡くなった方への想いが強くなり、今年の夏は、8月6日8時15分、8月9日11時には黙祷を捧げました。

詞章には原爆投下の瞬間、谷口さんの身体が熱風に吹き飛ばされ地面に打ちつけられ、さっきまで言葉を交わしていた子どもたちが空中に飛ばされ溶けてしまった様子が「白き花びらのごとく宙を舞う」と表現されています。これは谷口さんが見た光景をそのまま使っています。谷口さんご自身も大きな火傷を負ったので、その後もたいへんなご苦労があったと想像されます。
詞章を検討した折、戦争をした、と戦争に巻き込まれた、とでは見方が変わります。真実はこうだと発信すれば反発を生み、一番伝えたいことに届かない怖れもあります。ここまで言える、こうは言えないというラインがあると感じました。

昨年は映画「オッペンハイマー」が日本で公開されました。原爆を扱いながら被爆した日本人への謝罪がないようです。見ていませんが。
先日トランプ大統領の的外れ発言もありました。(イラン核施設攻撃を広島、長崎と同じと発言)
戦後80年にわたり、日本人も世界中の人も洗脳されてきました。これを書きながら、本当に何が真実なんだろう、どこまで洗脳されているんだろう、人類の英知って何、と考えてしまいます。

中国では南京大虐殺についての捏造映画が公開されるそうです。しかし、これに対しては本日付(令和7年8月10日)産経新聞には「南京大虐殺のウソ」、「反日情報戦に反論を」として、中国による歴史の歪曲であると日本側は堂々と主張すべきである、という記事がでました。

「長崎の郵便配達」は、論点ずらしでもなく、復讐心をたきつける捏造でもなく、平和へ向かう作品です。お客様の反応がとてもよかったそうです。

公演当日には谷口さんの娘さんが見に来て下さいました。谷口さんの写真を見て骨格を模して制作された能面を付けたシテが舞うのをご覧になり、実際の父のようだと言ってくださったそうです。
生涯、核廃絶を訴えた人物が舞台上に現れて語り舞う姿を思い浮かべ、苦難を乗り越えた先人がわたしたちに伝えたかったことは何かに想いをはせ、8月15日12時は黙祷を捧げたいと思います。

https://shonosuke.jp/blog/590.html

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