忘れられない人々VOL11

忘れられない人々 VOL11

 

『気にしないか、気にしないか』

 

Yさんと、奥さんは本当に自然体。

いつも穏やかな空気がほわーんと流れていました。

 

ですが、Yさんには進行性の難病がありました。

 

難病とは『発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものを言う。』

とあります。

 

やっぱり、進行性難病の診断を受けると、どんな人でもずっしりと心が重くなるのだと思います。

そんな人生の試練を前に、Yさんと奥さんが、イライラや、ネガティブな感情をあらわにすることはほとんどありませんでした。

 

穏やかに暮らしていたある日、Yさんの家の近くで火事がありました。

 

翌日の訪問で「昨夜の火事はこわかったでしょう?」と尋ねると、

お二人とも「え?火事があったんですか?」と、なんと気づいておられなかったのでした。

 

いざ、本当に災害などで避難が必要な時は支援の対象となってはいましたが、それでもその泰然自若といいますか、腹の座りっぷりに脱帽したのでした。

 

『気にするか、気にしないか』ではなく、『気にしない』の一択。

 

だからかどうかは定かでありませんが、Yさんの病気の進行はとてもゆっくりでした。

 

50代で発症した後も、定年まで仕事を続け、いつの間にか元気だった友人や同僚がこの世を去ってもYさんはそれなりにお元気で、ほんの少しづつ年齢と共にできないことが増えていったという様子でした。

 

どうしても、私たちは目の前のことに一喜一憂しがち。

気にしない力が、Yさんの人生から平穏を奪い去らなかったのではないかと。

 

出来事は受け取り方で、変わるのだなあと学ばせていただいたのでした。

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