忘れられない人々VOL9  お風呂の底力

忘れられない人々VOL9

 

『お風呂の底力』

 

「やめてください!!」

きっぱりした、この声はいったいどこから聞こえてくるのかと一瞬耳を疑いました。

 

そうです声の主はいつも穏やか、菩薩様のようなもうすぐ100歳のAさんです。

老衰で、少しずつ少しずつ元気がなくなって、キリギリまで自分で歩いてトイレに行かれてたのですが、それもだんだんと難しくなりました。

それにつれて、声も小さくか細くなって。

そんななか、Aさんは、いつも両手を合わせて「ありがとうございます。」と私たちをねぎらってくれます。

 

だから、にわかに信じられなかったのです。

 

この日は、少しづつ寒くなってきたので、浴槽に入れてあげたいということで、

“浴槽リフトでお風呂に入ろう作戦”を実施中でした。

訪問看護師さんと、現役大ベテラン介護福祉士のお嫁さんがてきぱきと準備を進めて、いざ出陣!!

その時に、きっぱりと、はっきりと「やめてください!!」といわれたのでした。

 

元気だったAさんも、ベッド上に寝ていることが多くなって関節も固くなります。

痛かったんですね。

 

最初は少し嫌がっても必ず気持ちよくなることをよーく知っているお嫁さんから、

「ちょっとだけがんばってねー」と言われてAさん、頑張りました。

 

そしてすぐに気持ちよくなって、

今度は「ここもお願いします!!あっ、ここも!!」と、はっきりきっぱりと洗ってほしい、さすってほしいとご所望。

最後には足を高々と上げて、足の親指に皮膚疾患があることを「ここもっ!!」と指さされます。

 

お嫁さんも看護師さんもニコニコしながら「ここもですねー」と快く対応。

 

 

お風呂の力ってすごいなー。刺激の少ない介護生活の中で、お風呂は一大イベントです。

そして「あー、極楽極楽」と言いたくなる瞬間。

 

 

それにしても、Aさんは、本当に命いっぱい生きておられるという感じ。

お嫁さんとして、専門職として長生きのお手伝い。

お嫁さんみたいな人を本当にすごい人というんだなあ。

『お風呂の底力』でもあるけれど、やはりここは『お嫁さんの底力』です。

 

そして、入浴イベント中、切羽詰まっていてもAさんはずっと敬語でした。

 

流石です❣❣

 

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