台風のように周りを巻き込んで去って行った夫婦

台風のように周りを巻き込んで去って行った夫婦


Aさんはアルコールの影響で生活はとても荒れていました。

足腰は弱り、転倒を繰り返し、介護者の奥さんとの口論も絶えません。

私が担当することになった経緯も、周りの関係者すべてを敵に回して、『訴える、訴えない』と何やら物騒な感じでのご依頼でした。(なぜか奥さんがうちの居宅を指定)


まずはもめごとの整理。

それが済んだらリハビリや福祉用具の検討に移っていきました。

支援開始して一年以上たってもご本人は生活を改める気持ちがなく、奥さんも自身の体調不良を理由に介護をあきらめた様子。

今後に関して意思決定支援をしようにも子供さんも向き合っていただけない(ほとんど家族崩壊のような感じでした)。


ムム、ムムム。

これは介護保険のマネジメントで片付く問題なのか・・・

誰かに相談したいけれど相談先の福祉事務所とも問題を起こしていたので支援していただけず。

地域ケア会議をしようにも包括センターとも問題を起こしている。

四面楚歌、孤立無援。困りました。


そこで、ご夫婦に相談しました。

「もう私に打つ手はありませんので、もっと優秀なケアマネジャーを依頼されたらいかがでしょうか。」

基本的にはこちらから支援を打ち切ることはしません。

その時は本当にもう打つ手なしの心境だったのです。


「すると、奥さんが、セルフプランを書くので大丈夫です。」という事でしたが、なんとか次のケアマネジャーさんが見つかって引継ぎをしました。


そして、その後のお二人ですが・・・

その後、介護保険を利用せずにお二人とも元気に過ごされています。(ケアマネジャーは自費の利用に関しての助言だけ)

Aさんはお酒をやめました。そして、元気になったので杖も突かずに歩けています。

スーパーに自分で買い出しに行けるほどです。


あれは、何だったのでしょうか。

皆で散々振り回されて、だれも構わなくなった途端自立して暮らせるとは・・・


台風のようだったなと思います。

ひとつだけはっきりとわかったことがあります。

全ての要介護認定者が介護サービスを必要としているわけではない。本人様や家族の力があれば自立して暮らせるという事だと思います。

一方でAさん夫婦にとってはどんな意味があったのでしょうか。

『人になにか指図されるより、自分たちでできることをやった方が面倒がなくてよい』という事がわかったのではないかと思います。

これはあくまで私の個人的想像です。

今となってはそれを聞く権利が私にはありません。


やはりご利用者とケアマネジャーは一過性の契約関係ということですね。

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