2025.08.19
家族関係調整は誰の為?
家族関係調整は誰の為?
Aさんが週に3回もデイケアに通って熱心にリハビリに取り組むことを支援当初は誰も想像していませんでした。
介入時、地域包括支援センターから家族への支援も必要なケースとして依頼を受けました。
Aさん夫婦は同居の家族と折り合いが悪く、同じ家の中で息をひそめるようにして暮らしていました。
同じ時間帯に同じ共有スペースを使わないなど、ちょっとしたルールがあり、それを守って暮らしていたのです。
Aさんは加齢とともに段々と弱ってきたのでいよいよ外出もしない、家の中でも交流が少ないと言った引きこもりのような状況でした。
見かねたご主人が意を決して介護サービス利用につなげて、私たちと出合ってくださいました。
ケアマネジャーの仕事に一つに『家族関係調整』と言うのがあります。
家族とは、密室のなかで非常に濃密にお互いの人生に関与していく関係性であり、『いい時もあれば悪い時もあり』で家族仲が良い問う事は難しくお互いの努力の上に成り立っています。
色々あるのが当たり前ともいえます。
在宅のケアマネジャーは単独で家族の中にコミットしていくという特殊な仕事でもあります。
もちろん『家族関係調整』とは、誰かを『裁く』ことではありません。
お互いにちょっとだけ譲り合って、居心地よく暮らしませんか?といった提案です。
家族の場合心理学的には『アンビバレンツ(ある対象に対して愛情と憎しみ、喜びと悲しみ、希望と絶望など正反対の感情を同時に持つ状態)』な感情を持ちやすいとされています。
大好きは大嫌いに、大嫌いは大好きになりやすいとも言えます。
これは特別な事ではありません。誰もが持つ普通の感情です。
しかし、これが家族と言う非常に近い関係性になった時に『遠慮』というものがなくなり、エスカレートしがちです。
Aさん家族は介護サービスと言うあかの他人が介在するようになって『遠慮』と『配慮』が働くようになって、改善された一面があります。
『家族関係調整』は勿論ご本人の権利擁護の部分は大きいのですが、実はご家族の為の側面も大きいと思っています。
命の順番で言えば親世代が先に亡くなる可能性が大きいわけですが、親御さんを見送った後に心に『澱』を残さない。
『やり切った、すがすがしい気持ち』で送り出すことができれば、その後の人生を生きていく力になるのではないかな。
そんな風に考えて支援させていただいています。
くれぐれも個人の偏った価値観によらないようにと言い聞かせながら・・・