「やばいなあ。間に合うかな」
そう言いながら時計を見た。そして、3000万円入った鞄の紐をギュッと握りしめた。当時はその会社で経理の一部を担当していた。
勤めていた会社は急成長の会社だったが、お金がなかった。出店のためお金は非常にタイトな状態。担当している経理部署は大変。5、10日(ごとび)は胃のあたりギュッとなった。
お金がないから。お金が少ないから当然口座にはお金が入っていない。そして、資金集めは失敗は許されない。そんな状態だ。資金移動のときは、1日2人かがりで担当。
最初は、上司に言われる通りに動くだけ。そのうち自分が指示するように・・今なら、ネットで振り込み完了で済むところも、そのときは、ネットバンキングに対応している銀行としていないところもあったので、一部はお金を持って銀行間を移動。
あるときは銀行印と通帳を渡されて、お金を引き出しに。金額は3000万円。
しかも、入金は午前中ではなく午後に・・そこから、引き出して別の銀行に3時までに入金しないといけないので、担当者も冷や冷や。
口座に余裕の資金があれば大丈夫だけれど、資金移動当日に入ったお金を移動するので本当に怖い。イメージで言うと月収20万円のサラリーマンで言うと200円のお金をもないそんな感じ。
200円のお金なら、簡単に友達に「貸して」で済むけれど、会社のお金は20万円、ひどいときには200万円足らない。そんな状態だ。自分でもよくやっていたな・・・と思う。
もちろん、会社は「超絶ブラック企業」。肩書きは「課長」だったけれど、25歳で部下もなく、会社のトイレットペーパーを買いに行ったり、蛍光灯を交換したりもしていた。本部の人員はすごく少ない。
ひどいときには340日くらいは会社に泊まっていた。結局残業代は「0」。ただ、今から考えるといろいろ経験させてもらえた。当時は2億円の支払いも経験した。また、
「給与の遅配」「給与の分割払い」「支払先からの怒鳴り込み」も経験した。給与の支払いでは従業員に怒鳴られた。「なんでちゃんと支払われないんだ」と。
もちろん、資金がないので私にどうしようもなかったけれど・・そんな中いろいろ勉強させてもらった。
その1つは「手は常に3つ打つ」というもの。資金調達では「手を打ちました。失敗しました」は許されない。「資金不足」=「不渡り」となり、「不渡り2回」で銀行取引停止。
そして、「倒産」。1回でも「不渡り」が知れば商品が入ってこないので、当然倒産へ加速する。だから、失敗は絶対に許されない。
だから、トップは常に「3つの手を打っていた」最終的には、倒産したみたいだけれど、これだけ厳しい状態でも会社が続いたのは常に3つの手を打っていたから。
私がいたときも、3戦全勝は1度もなかった。もちろん、3戦全敗も。いつも2勝1敗、1勝2敗を繰り返していた。今でも思うのは「常に3つ以上の手を考える」。
実はこれは集客にも使える。1つやって「ダメだ」ではなく、次に手を打ち安全策を考えておく。受験でも経営でも。