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第50話 ヒトと犬の虫歯の原因と治療

第50話 ヒトと犬の虫歯の原因と治療

1.ヒトや犬の虫歯って何が原因なの?
「敵を知り己を知れば百戦殆からず」というが虫歯の敵は誰か? 答えはスバリ口腔内の細菌。つまり細菌を制すれば虫歯をコントトロールできる。口の内にいる虫歯菌(ミ ュータンス菌)が砂糖が大好物で、砂糖を食べるとおしっこ(酸)を歯にぶっかける。おしっこ(酸)が歯の表面(ヒトロキシアパタイト) を溶かす(脱灰)ことで虫歯になる。従って、虫歯をコントロールしようと思ったら口の中の細菌がおしっこ (酸)を出さないようにすることが本質である。
虫歯がご馳走(砂糖)を食べた後に出すおしっこ(酸)で歯が溶けて溶け出したカルシウムやリン酸は実は“復活”するシステムがある。これを「再石灰化」と呼ぶ。つまり、 唾液によって脱灰によって溶け出したカルシウムやリン酸が再び歯にピタッと取り込 まれ、歯が元気モリモリと元に戻る。このように食事をする度に、歯は「脱灰」と 「再石灰化」を繰り返している。ところが、砂糖をたくさん食べたり、歯磨きをしないで歯垢をほったらかしにしたり、(特に睡眠中など)唾液も少ないような口内環境が続くと、再石灰化の復活スピードが追いつかず虫歯へと進行する。

2.むし歯の進行するプロセス
虫歯が進行するプロセスをザックリ説明すると、
1.口腔内細菌がまず歯にペタッとくっつく

2.口腔内細菌が食物中の砂糖(炭水化物)を食べておしっこ(乳酸、酢酸、プロピオン酸などの酸)を出す。
3.口の中が酸性になると歯(エナメル質のカルシウムやリン酸)が溶け始め脱灰する。
4.カルシウムやリン酸が失われるとその奥にあるエナメル質に穴が開く
5.さらに奥にある象牙質まで進むと冷たい飲食物がしみる
6.さらに進行し歯髄神経まで達すると激しい痛みが出る
(Fraser A. Hale.Dental caries in the dog. Can Vet J. 2009 )

従って、以下の3つの条件が重なり合うと虫歯が発生する。
1.虫歯菌(ミュータンス菌)を代表とする酸を作る口腔内細菌(歯垢)
2.細菌のエサとなる糖質(主に砂糖)

3.少ない唾液

3.犬って虫歯になるの?
犬の虫歯はヒトよりかなり少ない。でも実際に犬にも虫歯が発生していることも事実で、435頭の犬のうち23頭(5.3%)の犬で虫歯があったと報告(Fraser A.Hale.2009)にされている。

犬の虫歯の発生率が人より低い理由は以下の4つ

1 「歯の形状」:人の歯の多くが臼の形をしているのに対し、犬の歯の多くは薄く尖ってるから歯間間隔が広く、食物(虫歯のエサとなる糖)の停滞の領域が少ない  

2 「食事」:発酵性炭水化物をほとんど含まない食事

3 「唾液(のpH値)」犬の口のphが高いから細菌が出す酸を中和しやすい。(犬では平均pHは7.5であるのに対し、人間では6.5)

4 「アミラーゼ」:アミラーゼは歯の中や周りに保持されているでんぷんを分解するための酵素。人の唾液はアミラーゼが含まれているが、犬の唾液にはほとんど含まれていない。

犬が人より歯石ができやすい理由(Ilaria Iacopetti et al.2017)としては以下の2点がある。
1 犬の唾液中のCa、K、Na濃度が、人間の唾液と比較して犬の方が高い
2 犬の唾液pHが人より高い。
-ヒトの唾液pHは5.5~8.0(平均7.01)の弱酸性
-犬の唾液pHは5.0~9.0(平均7.97)の弱アルカリ
-猫の唾液pHは7.0~9.0(平均8.1)の弱アルカリ

このように犬と猫の唾液pHはヒトの唾液pHより有意に高いため、歯垢が石灰化して歯石になりやすくなっている。その結果、特に犬は歯周病になりやすい。一方、虫歯は 虫歯菌が原因で発生し、弱酸性の環境で活性化することがわかっており、犬の口腔内は弱アルカリ性で虫歯菌が繁殖しにいが故に犬は虫歯になりにくい。ただ、老犬になり唾液の分泌量が減ると、虫歯を発生しやすくなる。だから犬は虫歯が少ないけど歯石がつきやすく歯肉炎の有病率が比較的高い。

4.キシリトールが虫歯予防になるメカニズム
砂糖(スクロース)=グルコース(ブドウ糖)+フルクトース(果糖)という方程式 です。虫歯菌(ミュータンス菌)は砂糖を分解して出来たグルコース(ブドウ糖)を雪だるまのように重ねてデキストランというネバネバした歯垢(プラーク)を作って、歯の表面に細菌が付きやすい状態を作り出し虫歯菌(ミュータンス菌)をさらに集める。フルクトース(果糖)は分解され酸になり、歯の表面のミネラルであるカルシウムとかリンを溶かして虫歯にする。 キシリトールが虫歯予防に効果がある理由を医学的にまじめに説明すると、ミュータ ンス菌など口の中の乳酸菌は、糖を摂取すると解糖系であるホスホエノールピルビン酸依存糖ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)によりリン酸化されフルクトース6リン酸となって菌体内に取り込まれ、最終的に乳酸菌自身が生きるために必要なエネルギーである「ATP」と呼ばれる物質を合成する。糖と化学構造が似ているキシリトールを間違えて虫歯菌(ミュータンス菌)が取り込むとリン酸化されてキシリトール5リン酸 になるけど、これを代謝する酵素がないので代謝阻害を引き起こすので「ATP」を作 ろうとするけど作れない状況になる。キシリトール5リン酸は、それ以降の糖代謝系に入ることはないので排泄される(無益回路)。

これを噛み砕いておばあちゃんでもわかるように解説すると、
人間がご飯を食べておしっこやウンチをするように、虫歯菌(ミュータンス菌)は砂糖を食べて酸というおしっこを歯の表面にシャ~ってぶっかけるから歯が溶けちゃ
う。キシリトールは砂糖とそっくりな形をしているから、虫歯菌が大好物の砂糖だと間違えて食べちゃうんだけど、お腹が痛くなって、元気がなくなってきます。最終的には気持ち悪くなってキシリトール(糖アルコール)をオエって吐き出します。さらに虫歯菌は吐き出したキシリトールを「美味しそうな砂糖だ!」ってまた食べちゃってまたお腹が痛くなってまた吐き出すということを繰り返して行くうちに弱っていき死んじゃう。だからキシリトールを食べると虫歯にもならないし、虫歯菌も数が少なくなるってわけ。犬にはキシリトールは低血糖などの副作用があるからキシリトールの弟分であるエリスリトールが効果的で、皮膚用のEVSミストもしくは歯科用のERDジェルを毎日1日2回使用することによって凶悪の歯周病菌や虫歯菌を撃退する。

5.まとめ
虫歯菌(ミュータンス菌)が大好物の砂糖ではなく砂糖とそっくりさんのキシリトール(糖アルコール)を食べる→虫歯菌(ミュータンス菌)が減る→プラークが減る→
ネバネバ物質も出さなくなるので簡単に歯ブラシで流れ落ちつようになる→さらに虫歯菌(ミュータンス菌)が減る→作られるおしっこ(酸)が減る→虫歯になりにく
い。

あとがき
このメルマガは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌や口腔内細菌や皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、ペット合ったオーダーメイドの乳酸菌を飲むとによって腸内の細菌のバランスを元に戻してあげることによって痒いという症状が改善していくの目の前でみて、やはりカギとなるのは菌だと感じています。そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…

文責
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川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学 消化器内科学講座Ⅱ 客員講師
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