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第37話 ビフィズス菌とヒトのアトピー (後編)

第37話 ビフィズス菌とヒトのアトピー (後編)


<ビフィズス菌とアレルギーに関する学術論文>
・ロンガム菌(B. longum)だけをマウスに投与した研究では、制御性T細胞(Treg) が増加し、アレルギー性喘息による炎症や食物アレルギーによるIgE上昇が改善された(Lyons A.et al. 2010)。
・ブレーべ菌(B.breve)の投与は, IL-10 を産生する制御性T細胞(Treg) が増えて,大腸炎を軽減することがマウスを用いた試験でわかった(Jeon SG et al.2012)。
・ヒトの試験では,インファンティス菌(B.Infantis)を健康なおっさんに8週間飲んでもらったところ制御性T細胞(Treg) が増え(Konieczna P et al 2012)、赤ちゃんにブレーベ菌(B. breve)を飲ませたところ制御性T細胞(Treg) が増加した(Fujii T et al 2006)。
・ロンガム菌(B. longum)とブレーベ菌(B. breve)が腸管に対して高い抗炎症作用がある(Takeda Y et al.2009)。
・健常のオッサンや乳幼児のウンチにケストースを入れると他のオリゴ糖にくらべ、ロンガム菌が優先的にケストースを食べてめっちゃ増える。
・ロンガム菌が乳酸と酢酸を出し、結果としてそれらを食べる酪酸産生菌が増えて酪酸が増える。
・ケストースとロンガム菌を同時に摂取すると、ロンガム菌がより長い間腸管に止まることができる(最後は流れてウンチに出る)
・細菌の体を認識するセンサー(Toll様受容体)がT細胞に指令を出すことで乳酸菌やビフィズス菌が免疫に影響する(Kaisho T et al. 2006)
・ビフィズス菌の菌体成分や菌が作り出した酢酸などの代謝産物によってアレルギーや感染症,腸炎といった様々な疾病に対する予防・治療効果をもたらす。
・スギ花粉症のボランティア患者と健康なヒトに「ロンガム菌」か「ただの白い粉」のどちらからわからないようにして飲んでもらうという実験をしたところいくつかのことがわかりました。
「健康なヒト」と「スギ花粉症患者」の腸内細菌叢を比較すると違いがあることがわかりました。
具体的には、「スギ花粉症患者」は、花粉の飛散に伴いバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)とBacteriodes intestinalis(バクテロイデス・インテスティナリス)という2つの菌が変動することが確認 (Odamaki T et al. 2007)されています。
つまり、健常者と比べて花粉症患者では、スギ花粉飛散前のバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)とBacteriodes intestinalis(バクテロイデス・インテスティナリス)の菌数が有意に高い。
さらにこれらの2菌種が多ければ鼻水や鼻づまりと言った自覚症状が多く、スギ花粉特異的IgE濃度も高いことがわかっており、アレルギー症状の原因の1つになっていると言われています。
それに対してビフィズス菌(ロンガム菌)を摂取することにより、鼻炎や鼻づまりなどの自覚症状が減るだけでなく、スギ花粉特異的IgEの上昇と好酸球比の上昇、IFN-γの減少、TARC(Thymus and activation-regulated chemokines)の上昇が抑制された。さらにこれらの菌種の増加を抑制されたことからロンガム菌は整腸作用を介した間接的な免疫調節作用 (Odamaki T et al.2007)も示唆された。
さらに、
「ただの白い粉」を飲んだグループの人ではこれら2菌種の菌数が花粉飛散後に上昇したのに対し、ビフィズス菌(ロンガム菌)を飲んだ人では上昇しなかったことからビフィズス菌(ロンガム菌)を飲むとのアレルギーの発症に関わる2菌種の増加を抑制するという整腸作用で、抗アレルギー作用を示す。
さらに脱落者覚悟で上級者の方のためにマニアックに話すと、ロンガム菌による花粉症改善作用は飲んだ菌が腸管(パイエル板に存在する M 細胞など)から取り込まれ、 免疫担当細胞と接触し、腸管免疫から全身免疫へと働きかけることにより、抗アレルギー作用を発揮する「菌体成分による直接的な刺激」と、さらに飲んだ菌が優れた整腸作用を有していることから、腸内細菌叢のバランスを改善することで宿主免疫に影響を与えている「整腸作用を介した間接的な効果」の2つの作用によるものと推測される。

脱落した方のためにこれらの事実を女子高生の会話風にまとめると、
・ロンガム菌ってぇ、健康な人の腸内にガチでいるんだって。
・ロンガム菌ってぇ、健康なヒトの腸内にいるビフィズス菌ランキング第1位だって。
・腸内っつてもケツの穴の手前の大腸っつう場所にビフィズス菌がめっちゃ住んでいるだって。
・しかも大腸にいるビフィズス菌の中でも特にロンガム菌(B.longum)って菌がケストースをモリモリ食べるんだって!うちらはタピオカのいいけどね、うける。
・ケストースっつうのがマジで大腸にいるビフィズス菌を増やすらしいよ。
・花粉が飛ぶとマジだるいんだけど、ビフィズス菌飲んだらマジ卍じゃない?
・ケストースは甘いのに太らないだって、マジうけんだけど

まとめ
ビフィズス菌がスゴイ3つの理由は

1) 良いバイキングを増やすことによって悪いバイキンの勢力を弱める。

2)腸管から悪いバイキンが侵入するのを食い止める検問の役割をする。

3)暴走族のバイクのブレーキを強化して暴走族が法定速度で一般道を走行するようになる。


あとがき
このメルマガは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。
特に腸内細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、ペット合ったオーダーメイドの乳酸菌を飲むとによって腸内の細菌のバランスを元に戻してあげることによって痒いという症状が改善していくの目の前でみて、やはりカギとなるのは菌だと感じています。そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…

文責
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名古屋動物アレルギーセンター

川野 浩志(獣医師 獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医

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