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第24話 歯周病菌と腸内細菌
第24話 歯周病菌と腸内細菌
歯周病は歯を失う1番の原因でヒトでもペットでも大きな問題となっている口腔内の細菌の感染です。
ヒトの歯科領域では、口腔内の常在細菌を調べまくって歯周病に関連してんじゃねぇ?って菌と関係してないんじゃねぇ?って菌を分けたところ、歯周病菌の中で最も病原性が強いと言われている3つの主犯格の菌が見つかりました。
1.プロフィロモナス・ジンジバーリス (Porphyromonas gingivalis)
2.タネレラ・フォーサイセンシス(Tannerella forsythensis)
3.トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)
これらの最強3菌種を合わせてレッドコンプレックス(3菌種)と呼んでます(Sigmund S Socransky et al.2000) 。
このようにヒトではレッドコンプレックスがいるかどうかが病原性の高い歯周炎かどうかの分かれ目となりますが、犬の主な歯周病菌は
1.ポルフィロモナス・グラエ(Porphyromonas gulae )
2.タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)
3.カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)
特にタネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)はヒトでも検出される歯周菌種が犬でも検出されています。
細菌叢の中で存在比率は低くても、免疫を撹乱し、自分に有利な形へバランスを崩しちゃう細菌をキーストーン病原体(Keystone pathogen)と呼びます。ヒトの歯周病の主犯とされるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)がまさにそれです。つまり、ポルフィロモナス・ジンジバリスはヒト健常者の歯肉組織から検出されにくく、ひどい歯周炎部位からもちょっとしか見つかないけど悪い歯周炎と関係していることがわかっています。
細菌叢のバランスの乱れはディスバイオシスと呼ばれ、腸内細菌叢のディスバイオシスが多くの全身の病気に密接に関連していることが数多く報告されています。一方で、歯周病はこれまでに、口腔内の極悪バイキンであるレッドコンプレックスによって引き起こされると考えられてきましたが、近年では、歯周病は口腔細菌叢のディスバイオシスによって引き起こされる可能性が指摘されています。
歯周病と関連する口腔細菌を多量に継続的にゴックンしていると腸内細菌が乱れ、それにより様々な病気になりやすくなります。実際に、プロフィロモナス・ジンジバリスをマウスに飲ませると腸内細菌叢が変化し、腸のバリア機能が低下するとともに、炎症も誘発すると報告(Arimatsu et al., Sci. Rep. 4, 4828; 2014)されています。
健康な人で1日1.0~1.5リットルの唾液が分泌されると言われていますが、歯周病があると唾液中にポルフィロモナス・ジンジバリスが含まれており、それをガッツリ飲み込んでいることになります。
実際にヒトで歯周病菌の検出が報告された組織には、心臓(とくに弁)や肝臓だけではなく、血管(腹部大動脈)や関節(滑液)、さらには胎盤(臍帯・羊水)があります。さらに、最近、口腔内常在菌の一種で、歯周病を悪化させることが知られているフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum)が大腸癌の発癌過程へ関与しているというセンセーショナルな論文も報告されています。
まとめ
どうやら「口腔細菌叢の乱れ」→「腸内細菌叢の乱れ」→「不健康」という負の連鎖がありそうです。まさに「バース」→「掛布」→「岡田」にバックスクリーン3連発を食らった元巨人の槇原投手です。
歯周病治療が口腔内だけではなく、腸内細菌叢の改善を介して健康長寿に貢献します。”不健康の3連発“をくらわないためには定期的な歯科医による歯垢除去とデンタルフロスと舌ブラシを用いたデイリーケアが重要です。
「Floss or Die」(フロスをしますか?それとも死にますか?)
アメリカ歯周病学会 1998
あとがき
「なぜこのメルマガを始めたか?」1番の理由は、「診察室では伝えきれない有益な情報を伝えたいから」で、コンセプトは、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる最新海外論文を独断と偏見でピックアップして翻訳して届ける」です。
中学2年生の女子でもおじいちゃんでも理解できるような言葉で噛み砕いてわかりやすく表現することにコミットします。特に腸内細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、ペット合ったオーダーメイドの乳酸菌を飲むとによって腸内の細菌のバランスを元に戻してあげることによって痒いという症状が改善していくの目の前でみて、やはりカギとなるのは菌だと感じています。そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…
東京動物アレルギーセンター
センター長
日本獣医皮膚科学会認定医
獣医学博士 川野浩志
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