mail magazine backnumber
メールマガジン バックナンバー
【連載】vol.18 『感覚とセンス』
こんにちは。
節分も過ぎ、立春を迎えましたが、春の兆しはまだ遠い北海道です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このメルマガでは毎月1回、
私、ストレングスジャーナリストのこぼねあみが、
書道家関吉久美さんにインタビューを実施し、
その内容を記事として配信しています。
これまで語られなかった、関吉久美さんの内側を
お伝えしていく場です。
メルマガ記事第三弾。
テーマは
『感覚とセンス』
では早速始めていきましょう。
はじめに
これまでこのメルマガや、
以前のブログを読んでくださっている方であれば、
久美さんのこの言葉を覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
書道は、「感覚でもセンスでもない」。
今回は、常々この言葉を使っている久美さんだからこそ、
葛藤を抱いた新作についてのお話です。
書道家として、作品を生み出すまでの過程に迫っていきます。
[二つの新作]
Q:書きたいのを書くというお話を以前していましたが、いかがですか?
A:あーそれね。
3月の銀座の展示会に向けて、
生徒さんたちの作品は、12月にもう締め切ってる。
データももらってるし、
あとはホームページに上げたりキャプション作ったり、
作品集も作るからその原稿を考えたり。
やることはいろいろあって、準備しているんだけど、
そんな中でふと気づいちゃったんだよね。
あ、そういえば私、毎年この銀座の展示会で
自分の作品を出してたんだけど、
今年は新しいのを書いてないなって。
それで、慌てて書いたよね。
でっかいの。
割と、書きたい系のものが書けた気がします。
Q:わーいいですね、大きいの!でも「割と」、なんですね?
A:そう、二つ出そうと思ってて。
もう一つはちょっと斬新な感じにしました。
今までにない感じ。賛否あると思う。
斬新な作品
作ってる時は、「やったぜ!」と思った。
「うわー、これ好き!」
「こういうの、私やりたかった!」
「いやー、よく思いついたな〜」って。
でもね、ちょっと待てよと思って、
1日、2日と寝かせてみたの。
ちゃんと額に入れて、自分の部屋に飾って。
それを眺めてて、2、3日経ったときに、
「もうちょっと、ここ、こうしたほうがよかったかな」
って思った部分があったから、もう一回、新たにやり直した。
同じ感じでね。最初から。
それで、また2、3日置いて、
一度目のと二度目のを並べて壁に貼ったらね、
やっぱり一度目の作品の方がいいなって思った。
でもね、やっぱり自分の中で賛否があって。
だから、まだ実は写真には撮ってない。
写真に撮って、Instagramとかにアップすりゃいいんだけど、
なんか止まってる。
斬新すぎて。
本当にいいのかな、これで、という葛藤。
私は好きだし、多分それを出すと思うけど、
何かストッパーになってるのかもしれない。
Q:いいですね!好きなのが書けたんですね!
すごく見てみたいです!
でもそのストッパーがなんなのか、とても気になりますね!
自分の中での賛否ということは、
「いいな」って思うところと、
「いや…」って思うところがありますか?
A:そうだね〜。
本能では、めちゃくちゃいいの。
大好きなの。もう、手放したくないくらい。
だけど、脳みそが、他の評価を気にしてるんだと思う。
葛藤の正体
私さ、「書道家 関吉久美」って名乗って、
いつも偉そうに言ってるじゃん。
「書道って、こうだよね」
「基礎が先です」って言ってる人が?
それをやっちゃうんですか?
ってそういう声が、頭の中で聞こえる。
脳みそに、ちょっと叱られてる感じ。
Q:ほぉ〜、掟破りという感じですか?
A:うーん。そうだね。
「先生、それやっていいの?」
「そんなことでいいんですか?」
って言われそうな感じ。
簡単に誰でも真似ができちゃうから、
私もやってみようってなっちゃうと思う。
全然、やっていいんだけどさ。
テクニックでもなんでもない。
私、よくInstagramとかFacebookの投稿とかでも言ってるじゃん。
「書道は感覚とかセンスじゃありません」
「ちゃんと、知識と技術です」って。
でも、今回の作品は、
完全に『感覚とセンス』だけでやっちゃってる。
あー、そうだ、これだね。そう!
やっと言葉になった!
言ってることと、やってることが違うじゃんって、
だから自分で困ってたんだと思う。
この作品を生み出した方法は、
技術も知識もいらない。
思いついたこと自体は、
自分でもすごいと思うし、
正直、そこは自分を褒めたい。
でも、誰でも真似はできる。
思いついたのはすごいけど、簡単すぎる。
そこが、引っかかってる。
[理想への挑戦]
いつもね、頭の中に黒と白の好きなイメージがある。
一枚の白い紙に向かって、それが書けるかどうかに挑戦するんだけど、
なかなか近づかないの。
それでここ一年くらい、近づけない苦しみがあった。
でも今回、「これが表現したかった〜」ってのができたんだよな〜。
それで、二度目に挑戦したら、できなかった。
再現できたなら、それは知識と技術じゃん。
でもできなかったの。
だから、今回のは感覚とセンスだなって思って。
Q:今後似た感じの作品は作りますか?
A:わーできるかな〜。
でもやらないと思うな〜。いやどうかな〜。
やらないと思う。怖くて。
二度目はできなかったから、ある意味ショックだったんだよね。
何かを変えたらできるのかな〜。
四角を丸にするとか、三角にするとかしたら…。
出したくないんだよな本当は。
恥ずかしい。恥ずかしいってレベルなんだけど、
気に入っちゃったから仕方ない。
Q:恥ずかしいっていう感覚なんですね!
もしその作品を買いたいと言われたらどうしますか?
A:売れないと思う。
雑なのと、「手放したくない」。
Q:今まで、そのように思う作品はありましたか?
A:どうだろう、なかったかもね。
なんでやろうと思ったんだろう。
急に思いついてやってみたんだよね。
前例がないことをね、本当に「無」から。
何かのきっかけで思いついて、『0から1を生む』時間だった。
一度、0から1を見ちゃってるから、
二度目は1を2にしようとしてかっこつけようとしたんだよね。
その0から1が大事だったんだと思う。
[一筋の好き]
あーそうそう、銀座に新作を出さなきゃなと気づいて、
今から新作か〜出さなきゃな〜って気持ちがあったから、
その辺に積んであった正方形の紙が20枚くらい、
本来使えない、折り目のガッツリついた紙を、まあ適当に
処理するかー、くらいに。
字ではなく、頭の中に浮かんでるものを黒一色で書いてたら
色々楽しくなって、たくさん書いた。
そしてその時は満足したの。
楽しかったからいいやって思って終わった。
でも次の日、このままでは作品にはならんな〜と思って、
空いてる白いところに、いつもの戦法で字を書いた。
白いところに細い文字を書く系飽きたな〜と思いながら。
そしたら、ふと折り目が気になって、半分にびり〜ってちぎったの。
そのちぎった瞬間に思いついた。
そのちぎった感じが、
あ、なんかいいな、おもしろいなって思って。
切れる方向と切れない方向があるから、切りやすい方向にちぎって。
それまで、20枚も書いたのに一個もいい作品ができなくて
不貞腐れていて、才能ないなって思ってたんだけど、
そこで思いついたのが、この方法だった。
どん底の不貞腐れから、
一筋の好きを見つけて、おもしろ!ってなった。
次の日、同じことをやろうとしたんだけど、
カッコつけたんだね。
青い墨を使ってみようかしらとか、
薄墨入れよう〜とか
雑だった部分を整えようとしたら
ダメだった。
最初のは真っ黒だけでばーっとやったんだけど、
全部真っ黒がよかったんだろうね。
Q:黒だけに戻したらまたうまくいくとか…そんな単純ではないですかね?
A:いやーまたかっこつけそう。
無の感じがよかったんだろうね。
やっぱり感覚とセンスだけでやったんだよ。
またできるかな〜いや〜でもしばらくやらないかな。
そして、教室でも教えない。教えられないわ。
見て真似するのは全然構わないけど、教えるまでもない。
How to(やり方)は言えるけど。
これから、HPに全部の作品を載せるように準備しているから、
そこにも載せるし、展示会にも出すよ。
Q:そしてもう一つあるんですもんね?
A:そう、もう一つは、でっかい一般的な作品。
普通の額には入れずに、展示の仕方は工夫するけど、
作品としては普通です。
[おわりに]
これまで、アート書道は感覚やセンスではなく、
知識と技術だと言い続けてきた久美さん。
だからこそ、今回の作品に葛藤があったのだと想像します。
ただ、このひらめきがでてくること自体、
もちろん感覚やセンスもあるのでしょうが、
ここまで、飽きるほど、不貞腐れるほど
作品を生み出し続けてきたからこそ
生まれたものであるにちがいありません。
そして脳に、体に染み込んだ知識と技術と、
これまでに積み重ねてきた行動によって、
もはや本能と呼べるほどの技術が集結した結果なのだろうなと
素人ながらに感じた時間でした。
今回話題に取り上げた作品は、
2026年3月に開催される銀座の展示会にて
初公開されるものです。
ホームページや作品集でも作品を見ることはできますが、
この作品に関しては、特に、原画を見ることに意味があると感じます。
ぜひ、実際にあなたの目で、直接原画を見に行かれてみてください。
それではまた、どうぞ次回をお楽しみに!
◆銀座展示会詳細◆
第四回 書道家 関吉久美と門下生書展
日にち:3月25日(水)〜29日(日)
時 間:10:00〜19:00
場 所:ギャラリー銀座(東京都中央区銀座2丁目13−12)
入 場:無料
【関吉久美のアンサー】
今回、あみさんの取材を受けたのは先月(2026年1月)のことです。
なので、今回の記事に出てきた2つの作品はもう既にインスタやHPには掲載済みです。
実体のない、見えもしない世間や大衆に迎合することなく(職業なので迎合しなきゃならない
場面が多いですが)、「イズム」を大事にした物を今回は制作しました。
あちこちで既に露出してますが、私の座右の銘は「なんだバカヤロー」©荒井注先生、です。
ほっとけバーカ、です…笑