2026.08.11
お母さんの声と子どもの身体をつなぐ「ポリヴェーガル理論」
何度言っても動かないのは、反抗しているから?
「早くしなさい!」
「何度言ったら分かるの?」
「また同じことをして!」
夏休みなど、子どもと一緒に過ごす時間が長くなると、ついガミガミ言ってしまうことがありますよね。
言ったあとで、
「また怒ってしまった……」
「もっと優しくしたいのに」
と落ち込むお母さんも少なくありません。
でも、子どもが言うことを聞けないとき、単に反抗しているとは限りません。
もしかすると、子どもの身体が緊張し、言葉を受け取れる状態ではなくなっているのかもしれないのです。
この「心と身体のつながり」を理解するヒントになるのが、ポリヴェーガル理論です。
子どもの行動を「性格」ではなく「神経の状態」から見てみる
ポリヴェーガル理論は、自律神経の働きを「安心」「活動・防御」「停止・シャットダウン」という状態から理解しようとする理論です。
難しそうに聞こえますが、子育てに置き換えると、とても分かりやすくなります。

① 安心してつながれる状態
お母さんの表情が穏やかで、声にも温かさがあるとき、子どもは安心しやすくなります。
安心できているときは、
人の顔を見られる
話を聞ける
自分の気持ちを話せる
遊びや勉強に集中できる
周囲の人と協力できる
といった行動が現れやすくなります。
子どもが話を聞けるのは、「聞く気があるから」だけではありません。
身体が安心し、言葉を受け取れる状態にあることも大切なのです。
② たたかう・逃げる状態
強い声で叱られたり、急かされたりすると、子どもの身体は危険に備えて緊張します。
すると、
言い返す
怒る
泣く
走り回る
落ち着かなくなる
何度言っても同じことをする
といった反応が出ることがあります。
大人には「反抗している」ように見えても、子どもの身体では、身を守るための防御反応が起きているのかもしれません。
③ 固まる・動けなくなる状態
強い緊張が続いたり、逃げ場がないと感じたりすると、身体が動きを止めることがあります。
返事をしない
ぼーっとする
表情がなくなる
何もやる気が起きない
背中を丸めて動かなくなる
このような姿を見ると、「無視している」「やる気がない」と思ってしまうかもしれません。
しかし実際には、言うことを聞かないのではなく、身体が固まって動けない状態になっている可能性があります。
ポリヴェーガル理論では、こうした行動を「悪い行動」と決めつけず、神経系が自分を守ろうとしている反応として捉えます。
お母さんの「声のトーン」は、言葉以上に伝わっている
私たちは、話の内容だけを聞いているわけではありません。
声の高さ、速さ、強さ、表情、間の取り方などからも、相手が安全なのか、怒っているのかを無意識に感じ取っています。
例えば、同じ「お片づけしよう」という言葉でも、
「早く片づけなさい!」
と鋭い声で言われるのと、
「一緒に片づけようか」
と穏やかな声で言われるのとでは、子どもの身体が受け取るものは違います。
強い声を聞くと、肩が上がったり、首や背中に力が入ったり、呼吸が浅くなったりすることがあります。
一方、穏やかな声や安心できる表情に触れると、緊張が少しずつゆるみ、人の言葉を受け取る余裕が戻りやすくなります。
大切なのは、いつも優しく話せる「完璧なお母さん」になることではありません。
怒ってしまったあとでも、
「さっきは大きな声を出してごめんね」
「びっくりしたよね」
「もう一度ゆっくり話そう」
と関係をつなぎ直すことができます。
親子関係では、怒らないことよりも、安心できる状態へ一緒に戻る経験を積み重ねることが大切です。
子どもの背中や姿勢にも目を向けてみよう
緊張している子どもは、無意識に身体を守ろうとします。
肩を上げる、背中を丸める、身体を小さくする、呼吸を止めるといった変化が見られることもあります。
ただし、親の言葉がけだけで、骨がねじれて曲がる特発性側弯症が起きるわけではありません。側弯症が疑われる場合は、言葉がけの問題だと判断せず、医療機関で診てもらうことが必要です。
お母さんが自分を責める必要もありません。
ここで注目したいのは病気の原因ではなく、
「今、この子の身体には力が入っていないかな?」
「安心して呼吸できているかな?」
と、言葉だけでは見えない子どもの状態に気づくことです。
まず整えたいのは、お母さん自身の神経系
子どもを落ち着かせようとしても、お母さん自身が疲れ切っていたり、イライラしていたりすると、穏やかな声を出すのは難しいものです。
だからこそ、最初に整えたいのはお母さん自身です。
「怒らないように我慢しよう」と頭で抑えるだけでは、長続きしません。
言葉や考え方から変えようとする方法に加えて、呼吸、香り、触れること、身体を動かすことなど、身体から神経系へ働きかける方法も取り入れてみましょう。
これを「ボトムアップのアプローチ」といいます。
香りは「安心へ戻るきっかけ」になる
そこで活用できるものの一つが、アロマセラピーです。
香りを嗅ぐと、私たちは一瞬で、
「ほっとする」
「懐かしい」
「気持ちが切り替わる」
と感じることがあります。
香りの感じ方には個人差がありますが、精油の香りを心地よいと感じる人にとっては、
深呼吸したり、自分の状態に気づいたりするきっかけになります。
香りの吸入がストレスや不安、自律神経に及ぼす可能性についても研究されていますが、
医療の代わりではなく、日常のセルフケアの一つとして考えることが大切です。
例えば、イライラして声を上げそうになったとき、すぐに子どもを注意するのではなく、
好きな香りを感じる
ゆっくり息を吐く
肩や背中の力に気づく
声のトーンを少し落として話す
この短い習慣を持つだけでも、親子のやり取りが変わることがあります。
アロマセラピーは、子どもを思い通りに動かすためのものではありません。
お母さん自身が安心を取り戻し、その安心が声や表情を通して子どもにも伝わっていく。そんな「親子で整う時間」をつくるためのものです。
ポリヴェーガル理論を知ると、子どもの見え方が変わる
ポリヴェーガル理論を学ぶと、
「どうしてこの子は言うことを聞かないの?」
という見方から、
「今、この子の身体はどんな状態なのかな?」
という見方に変わっていきます。
すると、叱る前にできることが見えてきます。
声のトーンを落とす
少し距離を取って待つ
一緒に深呼吸する
背中を優しくさする
安心できる香りを取り入れる
落ち着いてから言葉をかける
子どもの問題行動だけを直そうとするのではなく、その行動の奥にある身体の反応に気づく。
そして、言葉で変えようとしてうまくいかないときは、身体や香りから整えてみる。
これが、ポリヴェーガル理論とアロマセラピーを一緒に学ぶ大きな意味です。
「また怒ってしまった」を、学びの入口に
子育て中にイライラするのは、お母さんの愛情が足りないからではありません。
お母さんの神経系も、毎日の忙しさや疲れから、大切な家族を守ろうと頑張っているのです。
だから、自分を責めるだけで終わらせなくても大丈夫です。
「また怒ってしまった」と気づいたときこそ、自分と子どもの身体で何が起きているのかを知るチャンスです。
ポリヴェーガル理論で心と身体の仕組みを知り、アロマセラピーで日常の中に「安心へ戻るきっかけ」をつくってみませんか?
知識だけで終わらず、香りを嗅ぎ、呼吸し、自分の身体で安心を感じてみる。
その小さな体験が、お母さんの声を変え、親子の関係を少しずつやわらかくしてくれるかもしれません。
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