2025.11.17
「それでも、私は支えたい」第5回〜「静かな別れ」

「それでも、私は支えたい」第5回~「静かな別れ」合意形成が導いた“穏やかな最期”~
叔母のこれからをどう支えていくのか――。
前回のブログでは、親族それぞれの想いがぶつかり合いながらも、話し合いを重ねて一つの方向へとまとまっていった経緯をお伝えしました。
👉 前回のブログはこちら:
https://home.tsuku2.jp/storeBlogDetail.php?scd=0000246017&no=17989
その「家族の合意形成」がようやく実を結び始めた矢先、思いがけない出来事が起こります。
―――――――――――――――
その後、叔母は施設で誤嚥性肺炎を起こし、再び病院へ入院しました。
8月20日、容態が悪化し、医師から延命治療をどうするかの打診がありました。甥のS君が付き添ってくれており、グループLINEには次のようなメッセージが入りました。
「誤嚥性肺炎が悪化し、呼吸ができなくなったら人工呼吸器をつけるかどうか聞かれました。」
つまり、“延命治療を行うかどうか”という重い判断を突き付けられたのです。
私はグループLINEにこう返信しました。
「叔母さんに直接確かめることはできませんが、私は延命治療はしない方がいいと思います。
S君、重い判断をさせているようで申し訳ありません。
私の意向はそうですが、皆さんはどうですか?
ここで意見を述べて頂いた方がいいと思います。」
すると、次々にメッセージが届きました。

「人工呼吸器をつけても、苦しい状態をただ延ばすだけだったら逆に可哀想な気がします。
それに一度つけた人工呼吸器を、後で外すタイミングを“決断してください”と言われた時の方が、もっと苦しい判断になると思います。」
「叔母さんをこれ以上苦しめないためにも、延命は望みません。」
「S君、大変な時が来てしまいましたね。みんなが側にいてあげられなくてごめんなさい。
延命は…私もしなくていいと思います。医療はいくらでも延命できる技術を持っていますが、もう逝かせてあげた方が叔母さんのためだと思います。私も望みません。」
「実の娘が最後に一度でも会いに来る意思があるなら延命治療も…と思いますが、全くその気がなさそうなので。」
「娘さんには二度お話しましたが、全く会う意思はないそうです。とにかく関わりたくないという感じでした。」
そして私は、みんなの言葉を読みながら胸の奥が締め付けられました。
延命を“するかしないか”だけではなく、
“やめる決断”にもまた、深い苦しみがある――。
命の境界線の前に立たされた時、
家族は誰もが正解のない選択を迫られるのだということを、改めて思い知らされた瞬間でした。
そしてS君からは、
「先生には人工呼吸器を望まないことを伝えてあります。みんなと同じ考えでよかったです。」
と返信がありました。
彼は医師に返事をしたものの、本当にそれで良かったのか迷い、LINEで私たちに確認したのでしょう。
グループLINEを作り、話し合いの場を設けておいたことが、ここで本当に役立ちました。
これこそが「合意形成の力」だと思います。
それから1週間後の8月27日夕方、叔母は静かに息を引き取りました。
連絡を受けたあとは、事前に決めていた通りに進めました。
葬儀屋さん、施設長で社会福祉士でもあるKさんの協力のもと、甥のS君は一人で見事に葬儀を終えました。
7月には全員で集まれた親族も、今回は誰も駆けつけることはできませんでしたが、S君が一人で立派に対応してくれました。
「集まれない時の段取り」を事前に決めておいたことが、見事に機能した瞬間でした。
いま叔母の家には、仏壇の前に小さな骨壺が置かれています。
部屋の空気は、あの日のまま止まっているようです。
来年の春には納骨式を行う予定です。
どうかその日まで、穏やかに休んでください。
――思い出をいっぱい、ありがとう。

🌼次回予告
叔母の見送りを終えたあと、私たちを待っていたのは“もうひとつの現実”でした。
叔母の財産はゼロ。
残されたのは、病院・施設の支払い、司法書士事務所への依頼費用……。
誰がどこまで負担するのか?
相続放棄はできるのか?
そもそも「死後事務」と「相続手続き」はどう違うのか?
相続問題は、実はここからが本番でした。
次回は、叔母が亡くなった後に残された“見えない負担”と、それに立ち向かった親族の記録をお送りします。
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