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クラフトルームHAKATA 【貴金属について・その3/シルバーの特性】

前回までの割金のお話の後は、これらがどんな特性があるか。
つまり、あなたが教室で使うその素材は、どんなものかということをピックアップしてみましょう。

教室で使っている素材は、SV(シルバー)950。鋳造した場合はSV925です。
割金の銅が少ないSV950は、柔らかく加工しやすい銀です。
手作りの場合、延ばしたり切ったり叩いたりすることで形を作っていきますので、加工しやすいSV950を使います。

銀は熱伝導率が高く、火をあてると全体に熱が伝わりやすいので、焼鈍し(やきなまし=硬くなった金属を柔らかくすること)が容易。
加工していると加工硬化といって金属は硬くなっていきます。ですから途中で何度も焼鈍すのですが、石が入った状態のまま火をあてると高温になり、石は色が変わったり割れる原因となります。
ですから、石を留める場合は本体の形が出来上がった一番最後。石留めの後は軽く磨く程度です。

石が留まっている状態でのサイズ直しは出来ないですし、だからと言って爪を開いて石を外し、留め直すということは爪が金属疲労で折れる原因になりますので完成されたシルバーリングのサイズ直しをすることは殆どありません。(教室でサイズ直しの練習をシルバーですることはありますが。)

熱が全体に伝わりやすいため、沢山のパーツのろう付け(溶接)にはコツがあります。
ろう(主素材は母体の金属と同じですが、溶け出す温度を変えるために色々混ざってます)を数種類用意しておき、溶ける温度が高い順からだんだん低く使っていきます。
経験した方は想像がつくと思いますが、失敗すると作ったものが分解します。泣いちゃいます。
しかし、この技術・手順を身につけることが、貴金属加工の基本となります。

さて、皆さんが知っている銀の特徴は、色が変わるということだと思います。
「酸化」と表現する人が多いのですが、あれは酸化ではなく、空気中の「硫化水素」に反応しているので「硫化(りゅうか)」といいます。
硫黄系の温泉に入ると真っ黒になりますね。空気中でもそれが起こります。

シルバーは変色するから嫌、という人もいれば、それが良い。味があるという人もいます。

表面的なことなので、薬品で一皮落としてあげることで、白さは戻りますが、その繰り返しです。
変色防止のためにメッキを施したり、薬品でコーティングしたり、あるいはわざといぶし銀にする場合もあります。
前回・前々回のメルマガで説明した割金を工夫して、変色しにくい(変色しないわけではない)銀も開発されています。
しかし、シルバーに変色はつきものです。これは受け入れるしかありません。
ここまで読むと、シルバーってなんて大変なんだ!と思いますね。

さて、この大変さを「楽」にしてくれたのがロストワックスキャスティング=鋳造による制作方法です。
鋳造することで量産できるようになりましたし、最小限の貴金属加工で済むように原型の状態に完成度の高さが求められます。
ワックスやシルバーで制作したものを原型とし、ロストワックスキャスティングで量産するのがジュエリー制作の主流です。
CADで原型を作る方法もあります。
貴金属加工は建築的なもので、ワックス加工は彫刻的なものです。CADは工業的?とでも言いましょうか。

脱線しましたが、シルバーは表面をコーティングすることで変色を遅らせることは可能です。
ただし、表面をこすったり、磨いたり、身につけたことによる汗・水分などでコーティングは剥がれていきます。
メッキをするという手段もありますが、メッキも完全ではありませんし、メッキができない場合(石が不向きなど)もあります。

逆に、身につけて常に何かに触られ、擦られている状態の方が常に磨いているのと同じ状態なので変色しにくく、ジュエリーケースに入れっぱなしだったりほったらかしにしている方が変色は激しいです。
シルバークリーニングの薬品や、研磨用布などでお手入れすることで、表面の硫化膜は剥がすことが出来ますが、ぼ~っと霞んだような白い表面です。
それがシルバーの色で、プラチナやホワイトゴールドよりも白い金属です。

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シルバーは何といっても貴金属の中では素材価格が安いです。
金・プラチナで練習するのはコストがかかりすぎますし、シルバーで練習することで金・プラチナのハードルが下がります。
それ以外の金属は貴金属ではありません。
貴金属と卑金属の違いは、希少性と加工のし易さ。そして不変性。
貴金属は永年、その存在を残します(錆びて朽ちることがありません。)←これが大事。

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ちなみに、貴金属加工の職人さんはシルバーはめったに使いません。原型制作にはシルバーを使いますが、加工は引き受けません。
同じ貴金属とはいえ、シルバーはひと手間も二手間も必要であるとともに、再加工には適さないからです。
シルバーは一番手間のかかる貴金属と言えます。

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「ろう」「メッキ」「ワックス」これらについては、また別項目を作って書かせていただきます。

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クラフトルームHAKATA 【貴金属について・その1】
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