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第78話 なぜうんちは茶色なのか?
第78話 なぜうんちは茶色なのか?
ウンチの色は毎日変わるけど、基本的には茶色だ。
実は、ウンチの色は腸内細菌の状態を視覚的にチェックできる強烈なツールの一つだ。
ストーカーぎみの男子からのLINEは未読&削除でいいけど、トイレでウンチをしたら「何色?」「浮いてる?沈んでる?」は必ず色をチェックした方がよい。
女子は大丈夫じゃなくても「全然大丈夫〜」って嘘をつくが、ウンチは嘘をつかない。
さて先日、診察室で小学生の男子に「先生、なんでウンチって茶色なの?」てズバッと聞かれて一瞬ビビった。
この疑問を医学的にクソ真面目に説明すると、ウンチの色は胆汁から出る「ビリルビン」っていう黄色い物質が腸内細菌の作用で少し色が変わり、ウンチの茶色になる。
中学2年生で理科の先生から教わったように、血液の中には酸素や二酸化炭素を運搬する赤血球という細胞がいて、その中には赤いラムネ(ヘモグロビン)が入ってるから血液は赤い。
この赤血球は約120日でヘトヘトになって勇敢に戦死する。
赤血球が戦死すると。
①赤血球の中の赤いラムネ(ヘモグロビン)がベチャっと出てくる。
②血管の中でヘモグロビンが「ビリルビン(黄色)」に変身する。
③ビリルビンは肝臓工場で処理されて、新たに出荷されて胆のうで胆汁として「脂肪の消化」という出番まで待機する。
④食べ物が腸に流れてくると胆汁は、脂肪を消化するために待機していた胆のうから胆管トンネルを通過して現場の腸管へ直行する。
⑤消化物が小腸→大腸と進んでいく中で腸内で待ち構えていた腸内細菌が胆汁中の「ビリルビン」をモグモグ食べて「ウロビリノーゲン」に変え、さらに酸化されて「ステルコビリン(茶色)」に変える。
つまり、戦死した赤血球の赤い色素が腸内細菌によってステルコビリン(茶色い色素)になるからウンチが茶色という壮大なストーリー。
このビリルビンは腸内のpH(酸性・アルカリ性)によって色が変化するからウンチの色も変化する。
例えば、腸内が酸性(phが下がる)であれば”黄色っぽい色”、アルカリ性(phが上がる)であれば”黒ずんだ茶褐色”になるし、ウンチが空気に触れて酸化すると”緑色”になる。
だから、腸内にビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌が多いと乳酸を出すので腸内は弱酸性(phが下がる)に保たれるからウンチの色は”黄色っぽい色”になる。
しゃぶ葉などの食べ放題レベルで野菜をガッツリ食べていると、大腸(結腸)内で発酵が進み、腸内は酸性(pHが下がる)に傾くからウンチの色は薄くなる(黄色)。
そんな時はトイレでこう叫ぼう「ナイス、イエロー!」
逆に肉や脂肪ばっかり食べたりして悪玉菌が増えるとアルカリ性(pHが上がる)、ウンチの色が黒っぽくなる。
さらに便秘だとうんちがグズグズ腸に長くとどまっているからウンチの色は黒っぽくなる。
そんな時はトイレでこう叫ぼう「バッド、ブラック!」
ピーピー下痢の時は消化物の水分が多いことに加えて、腸内細菌の影響を受ける暇もなくサッと腸内を通過するから色が薄い。
もしあなたのウンチの色が黄色(黄褐色)なら、あなたの肝臓と腸がちゃんと仕事をしていることを意味する。
女性の「大丈夫」と赤や黒のウンチにはくれぐれも気をつけろ!
あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。
犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)を用いた補完治療法の確立」
を目指しています。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
実際に臨床現場の最前線で、有効な菌を与え(プロバイオティクス)、その菌を育てる(プレバイオティクス)ことで腸壁に住む細菌のアンバランス(dysbiosis)を元に戻すと痒いという症状が結構改善していく動物たちを目の前でみて、やはりそのキープレイヤーとなるのは菌だと感じています。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明している。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して力ずつのアプローチ・抗菌薬による殺菌という空爆で有用菌まで無差別に爆撃することのないように静菌制御して、動物達の腸管内や皮膚表面に暮らす細菌たちの潜在能力に期待するとともに、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。この記事が誰かの目に留まり、アレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんへの恩送りとなりますように…
文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
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