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習わぬ能を語る (No.1)
こんにちは
メルマガご登録、ありがとうございます。
これから「能楽師 加藤眞悟」のメルマガを担当して参ります、加藤美紀です。
ふだんは県立高校の非常勤講師で、英語を教えています。
能楽師の妻となり二十数年、謡や仕舞のお稽古はしていません。
このたび、「門前の小僧習わぬ経を読む」・・・ならぬ、「門前の素人、習わぬ能を語る」ことになりました。
ある意味、勇気ある行動ですが、やってみようと思います。
なぜ、そんなふうに思えたのか、といいますと・・・
わたしが友人に能を紹介するとき、友人は、たいてい「初めて能を観る」人です。
そして、「えーどうしよう、わたし、わからないんじゃないかなあ」と心配顔で少し緊張しています。
わたしが誘ったから来てくれたので、ありがたいなと思います。
そこでわたしも、なるべく安心して、いい時間を持ってもらえるように、舞台形式や、番組の見方などを簡単にお話しします。
「前場」と「後場」があること。間に「中入り」が入ること。「中入り」は、アイ狂言が前半をまとめて説明してくれること。
シテが物語の主人公で、「前場」と「後場」を勤め、「中入り」の間に着替えて再登場する、などです。
番組に書かれている名前は、舞台登場順になっていること。お囃子の並び方は、ひな人形の五人囃子の順番。
地謡は主人公の心境や状況を謡っている、などです。
それ以上は、なるべく「あとは、自分の感性で楽しんでね」といいます。
芸術作品は、絵画でも音楽でも、出会いですから、観る人の世界で、自由です。
お囃子の音色に耳を傾けるだけでも、日常から離れて瞑想にふけることができます。
昔の日本人は、こういうものを楽しんでいたと思うだけでも、現代の生活がいかに変化を遂げたものかがわかります。
お能は、テレビ、映画、演劇などの他の舞台のどれとも似ていません。
情報を与えてくれるのを待っていると、なかなか入り込めないかもしれません。
まずは、能楽堂の空間の中で出会う「自分の心」の赴くままに、感じる世界を楽しむのが一番だと思います。
この情報の時代、能を知りたいと思えば、山ほどの解説、あらすじや動画さえも手に入ります。
情報があり過ぎて選べない・・・のかなと思います。
皆さまが、今度お能を観に行くことになったとして、「能って、どんなの?」と思ったとき、
友だちに能楽師の妻がいて、「ねえ、わかりやすく教えて」と聞けたら、話が早いですよね。
修行やお稽古をしたことのないわたしですが、日常に謡の声が聞こえ、鼓の音が耳に入り、能の英語ガイド作成をお手伝いしています。
能の世界の門前にいるだけで、何かがゆっくりと心の深いところで癒されてゆくのを感じています。
能楽師の妻として、これまで感じたことや、気づいたことをお伝えするだけでも、
「ふうん、それはおもしろい」と、初めて能を観に行く心の準備ができると思います。
「こんな世界を作った日本人ってすごい」「こういうところが、日本人らしさなのかな」など、
日本人が自信と誇りを思い出せる世界が広がっています。
変化の激しい現代を生きるわたしたちが、先人が残してくれた伝統文化の宝物を忘れないように、
皆さまのお役に立てる情報をお届けしてゆきます。
まずは、目前の「令和3年9月19日第二十三回 明之会」に向けて、観に来て下さる方が、オンラインでお能を観て見ようという方が、
安心して能の世界に浸ることができるように、「これを知っておいた方が楽しめる」ところから、公演日まで何回か配信してゆきます。
お楽しみに!