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セルフケアをやってくれない患者さんは「やる気」の問題ではなかった
🦷 セルフケアをやってくれない患者さんは「やる気」の問題ではなかった
シカキンセラピーでは、患者さんが自分でセルフケアを続けられることを大切にしています。
しかし、臨床ではこんな経験がありませんか?
「しっかり説明したのに、まったくやってくれない」
反対に、
「少し説明しただけなのに、きちんと続けてくれる」
同じように説明しているのに、なぜ結果が違うのでしょうか。
私たちはつい、
「やる気がないから」
「意識が低いから」
「まだ理解していないから」
と考えてしまいます。
もちろん、それが原因のこともあります。
しかし、本当にそれだけなのでしょうか。
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🤔 人は「理解したから行動する」わけではない
私たちは、
理解する → 納得する → 行動する
と考えがちです。
しかし実際の患者さんを見ていると、それだけでは説明できないことがたくさんあります。
例えば、
セルフケアの方法は覚えている。
必要性も理解している。
それでも続かない。
そんな患者さんは少なくありません。
一方で、
短い説明だけで行動に移せる患者さんもいます。
この違いを見ていると、
行動の前にはもう一つ大切な要素があるように思えます。
それが、
「安心感」
です。
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🌱 人は安心すると行動できる
考えてみてください。
不安でいっぱいの時。
焦っている時。
緊張している時。
人の話は頭に入りにくくなります。
新しいことを始める余裕もありません。
反対に、
安心している時は、
話を聞ける。
理解できる。
納得できる。
そして行動に移しやすくなります。
つまり、
理解 → 納得 → 行動
ではなく、
安心 → 理解 → 納得 → 行動
なのかもしれません。
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🚦 なぜ安心が大切なのか?
実は私たちの体は常に、
「ここは安全か?」
「それとも危険か?」
を無意識に判断しています。
これは本人の意思とは関係ありません。
呼吸や心拍を自動で調整している自律神経が、大きく関わっています。
最近では、この状態を理解する考え方のひとつとして、
「ポリヴェーガル理論」が注目されています。[^1]
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🚦 ポリヴェーガル理論とは?
ポリヴェーガル理論では、人の体には大きく3つの状態があると考えます。
ここではわかりやすく、信号機の色で考えてみましょう。
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🟢 緑モード(安心)
- リラックスしている
- 話が入ってくる
- 学ぼうと思える
- 行動しやすい
患者さんで言えば、
**「なるほど、やってみよう」**
と思える状態です。
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🔴 赤モード(警戒)
- 不安
- 焦り
- 緊張
- イライラ
患者さんの心の中では、
「本当に大丈夫かな?」
「早く終わらないかな…」
という状態です。
この時は、どんなに良い説明をしても入りにくくなります。
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🔵 青モード(あきらめ)
- 無気力
- 動きたくない
- 考えたくない
- 希望を持てない
長く症状に悩んでいる患者さんに見られることがあります。
「何をやっても変わらなかった」
そんな経験の積み重ねで起こる状態です。
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⚠️ 患者さんはわざとそうなっているわけではない
ここが大切なポイントです。
患者さんは、
わざと赤モードになっているわけでも、
わざと青モードになっているわけでもありません。
体が無意識に、
「安全か」
「危険か」
を判断しているだけです。
つまり、
❌ セルフケアをやらない患者さん
ではなく、
⭕ まだ安心できていない患者さん
なのかもしれません。
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🤝 シカキンセラピーとの共通点
シカキンセラピーでは筋触診を重視しています。
しかし私たちが見ているのは筋肉だけではありません。
患者さんの
- 表情
- 声のトーン
- 呼吸
- 姿勢
- 反応
も大切な情報です。
なぜなら、
安心できている時と、
緊張している時では、
同じ患者さんでも反応が変わるからです。
また、セルフケア指導も同じです。
どれだけ正しい方法を伝えても、
安心できていない状態では行動につながりにくくなります。
だから私たちは、
「何を伝えるか」だけではなく、
「どんな状態で伝えるか」
も大切にしています。
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✨ 安心は技術である
患者さんは、私たちが思っている以上に周囲の空気を感じ取っています。
- 表情
- 声のトーン
- 話すスピード
- 姿勢
- 雰囲気
そうしたものから、
「この人は安心できる人か」
を無意識に判断しています。
安心できる歯科医師。
安心できる歯科衛生士。
安心できる歯科助手。
安心できるシカキンセラピスト。
そんな存在と接すると、患者さんは少しずつ緑モードへ近づいていきます。
そして、
理解できる。
納得できる。
行動できる。
という流れが生まれます。
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🌱 シカキンが目指しているもの
シカキンセラピーが目指しているのは、
単にセルフケアを教えることではありません。
患者さんが、
「やってみよう」
と思える状態をつくることです。
筋触診。セルフケア指導。姿勢や呼吸へのアプローチ。
そして安心できる人間関係。
これらがそろった時、
患者さんは自分の健康と向き合い、行動を続けられるようになります。
シカキンセラピストに求められるのは技術だけではありません。
患者さんが安心して学び、行動し、自分の健康を守れるよう支えること。
そのためにまず、
私たち自身が「安心を発信できる存在」でありたいと思います。
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[^1]: ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)は、1994年に神経科学者Stephen Porgesによって提唱された、自律神経(とくに迷走神経)と感情・社会的つながり・安全感の関係をめぐる枠組みです。臨床現場では「安全か危険かを体が感じ取る」という体験を言葉にしやすい視点として広く用いられています。一方で、この理論の進化的・解剖学的な前提や、その根拠とされる生理指標(呼吸性洞性不整脈=RSA)の扱いについては、神経科学・自律神経研究の専門家から科学的な批判があり、現在も議論が続いています(例:Grossman P. ほか38名, "Why the Polyvagal Theory is Untenable," *Clinical Neuropsychiatry*, 2026)。Porges自身も批判に応答しており、論争は決着していません。したがって本記事では、ポリヴェーガル理論を確立した事実としてではなく、「安心が学びや行動を支える」という臨床的な気づきを整理するための、ひとつの分かりやすいモデルとして紹介しています。
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主な参考文献
- ポージェス S.W.『ポリヴェーガル理論入門』(W.W. Norton, 2011)
- Tanaka T, et al. *Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly.* J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667.
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