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メールマガジン バックナンバー
時間が少しだけ歪む時
前回の夜光虫のお話もそうでしたが、
日常の中にある「非日常」を見つけるのって、
本当に楽しいですよね。
でも、非日常って「見つける」だけではなく、
誰かがそっと「仕掛ける」こともあります。
「非日常の仕掛け」と聞くと、
何を思い浮かべますか?
街中で突然始まるフラッシュモブや、
大がかりなサプライズでしょうか。
私はどちらかというと、
もっと静かで個人的な仕掛けに惹かれます。
たとえば、
子どもの頃に本に挟んだまま忘れていたしおり。
久しぶりに着たコートのポケットから出てきたチケット。
今は亡き母の字で書かれた買い物メモ。
久しぶりに会った人が何気なく口にした口癖。
そんなものに出会った瞬間、
私たちの時間は少しだけ「歪む」気がします。
今いる場所が、
一瞬で昨日でも今日でもない別の時間へとつながる。
懐かしい空気や匂い
その頃の心の温度までが
ふっと目の前によみがえります。
私の大好きな本、
精神科医の エリザベス・キューブラー=ロス の
『 死にゆく子ども達 』の中に、
とても心に残る話があります。
亡くなることを知っていた小さな男の子が、
家のあちこちに手紙を隠していたのです。
彼が旅立った後、何日も、何ヶ月も経ってから、
「こんなところに?」
という場所から、その手紙が次々と見つかる。
そこには家族への温かな言葉や
イラストが描かれていました。
手紙を見つけた瞬間、
ただの日常だった景色は、
愛と涙に満ちた特別な時間へと変わります。
男の子は、自分がいなくなった後の日常に、
そっと「時間の歪み」を残していったのでしょう。
美術の世界には、
デュシャンの《泉》(男性用便器をポンと置くような、
美術界の常識をひっくり返す強烈な仕掛け)
みたいな示し方もあります。
でも私は、
誰かの心の奥だけに届くような、
静かな仕掛けが好きです。
それに出会ったとき、
胸が熱くなったり、
切なくなったり、
思わず笑ってしまったりする。
そんな瞬間こそ、
私たちは自分の人生を
深く味わっているのかもしれません。
大がかりなイベントなんてなくても、
日常にはたくさんの「時間の歪み」が隠れています。
引き出しの奥や古い本のページの間には、
いつかの自分が仕掛けた、
お茶目な「あまのじゃくくん」からのメッセージが、あるかも!
断捨離しながら探そう!