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【チーズ界の革命児】「プロセスチーズ」誕生秘話
みなさん、こんにちは。
冷蔵庫に必ずと言っていいほど入っている「スライスチーズ」や「6Pチーズ」。
実はこれらが、ある「切実な悩み」を解決するために生まれた、
20世紀最大の発明の一つだということをご存知でしょうか?
今回は、私たちが当たり前のように食べている「プロセスチーズ」の裏側に隠された、
男たちの執念と驚きのルーツに迫ります。
1. すべては「フォンデュ」から始まった
プロセスチーズの故郷は、アルプスの山々に囲まれたスイス。
1911年、ルツェルンにある「ゲルバー社」の二人の男、
ウォルター・ゲルバーとフリッツ・シュテットラーが世界で初めてその製造に成功しました。
当時の悩みは深刻でした。
スイス特産のエメンタールチーズを輸出しようとしても、輸送中の温度変化で油が浮いたり、
発酵が進んで腐ったり……。「どうすれば美味しいまま遠くへ届けられるのか?」
彼らが目をつけたのは、意外にも伝統料理の「チーズフォンデュ」でした。
チーズを溶かし、乳化剤(クエン酸ナトリウム)を加えることで、
冷めても分離せず、均一な状態を保つ魔法の製法にたどり着いたのです。
2. 深夜の台所から生まれた「クラフト」の執念
スイスでの発明とほぼ同時期、アメリカでもこの課題に人生を賭けた男がいました。
「クラフト・フーズ」の創業者、ジェームズ・L・クラフトです。
シカゴでチーズの行商をしていた彼は、夏場に商品が溶けて台無しになる光景に心を痛めていました。
「腐らないチーズを作ってみせる」
仕事終わりの深夜、彼は自宅の台所でチーズを刻んでは加熱し、実験を繰り返す日々。
その執念が実を結び、1916年、「加熱殺菌して缶詰にする」という手法で特許を取得します。
この発明を爆発的に広めたのは、皮肉にも「第一次世界大戦」でした。
戦地の過酷な環境でも腐らず、栄養満点なクラフトの缶詰チーズは、
米軍の携帯食として600万ポンド以上も採用されたのです。
3. 「プロセス(Process)」に込められた意味
なぜ、私たちはこれを「プロセスチーズ」と呼ぶのでしょうか?
それは文字通り、「再加工(Process)したチーズ」だからです。
その工程は、まるで理科の実験のよう。
ブレンド: チェダーやゴーダなど、異なるナチュラルチーズを砕いて混ぜる。
加熱・乳化: 100℃前後でかき混ぜながら溶かす。ここで菌を死滅させ、熟成をストップ!
成形: 熱いうちに型に流し込み、自由な形に冷やし固める。
この「一度熟成を止める」という逆転の発想が、食卓に革命をもたらしました。
4. 便利さの裏にある「3つの革命」
プロセスチーズの登場は、単なる「新しい味」ではなく、以下の3つの価値を生み出しました。
「いつでも」… 冷蔵技術が未発達でも、数ヶ月の長期保存が可能に。
「どこでも」… 熟成が進まないから、常に一定の「あの味」が楽しめる。
「どんな形でも」… スライス、ブロック、キャンディ型。用途に合わせて自由自在。
かつてチーズを食べる習慣がなかった日本に、これほどまでチーズ文化が根付いたのは、
まさにこの「安定感」と「扱いやすさ」があったからこそと言えるでしょう。
編集後記
美味しいチーズフォンデュを食べている時に、「これを保存できたら便利なのに!」と思いついたスイスの二人。
そして、深夜の台所で鍋をかき混ぜ続けたクラフト氏。
私たちの豊かな食卓は、そんな「ちょっとした気づき」と「切実な想い」から生まれているのですね。
次回は、いよいよ「日本におけるチーズの歴史」について紐解いていきます。
あのお馴染みのチーズが日本でどう広まったのか? どうぞお楽しみに!
それでは、また次号でお会いしましょう。
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