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メールマガジン バックナンバー
宇宙船の匂いと、口をあけて見る星と。
こんにちは
前回のメルマガで
「大本(おおもと)は体験なのかもしれない」
というお話をしました。
柑橘をむいた瞬間の、あの指に残る香り。
アトリエの匂い、庭の草の匂い、キンモクセイ。
私たちの思い出を形づくっているのは、
成分の数値ではなく、生身の「体験」なんだ、と。
そんなことを書いたあと、
私の妄想は一気に「宇宙」まで飛んでいきました。
もし、私たちが宇宙船で暮らすことになったら?
そこにあるのは、無重力。
人工の空気、再生された水。
太陽の光は、分厚い窓越しにしか届きません。
庭の草の匂いも、キンモクセイの香りも、
今の地球と同じ体験は、もうできない。
「それは、なんだか寂しいな」
一瞬、そう思いました。
でも——。
「体験」そのものがなくなるわけではないんですよね。
宇宙船には宇宙船の、きっと独特な匂いがある。
床から伝わる微かな振動がある。
ふわふわと浮く、心もとない身体の感覚がある。
そこで生まれた子どもたちは、
その環境の中で新しい「大本」を積み重ね、
きっと、新しい幸せの形を見つけるのでしょう。
戦場で暮らす子も、ジャングルで生活する子も、
都会でスマホを離さない子も。
みんな、それぞれの世界の中で空を見上げている。
私はデッサンをしているとき、必ず思うことがあります。
刻一刻と変わっていく、影の形。
光が差し込む角度の変化。
「ああ、地球は動いているんだなぁ」
私たちは今、猛烈なスピードで動いている地球の上で、
その先の、果てしない宇宙の一部として生きている。
子どもの頃、
「今見ている星の光は、何万年も前に爆発した星の残像かもしれない」
と聞いて、胸がザワザワしたのを覚えています。
もう存在しないかもしれない光を、
今、私は受け取っている。
宇宙には、目に見えない無数の光が
すごい早さで動いているんだ。
そんな妄想を、口をあけてしている子どもでした。
星は、夜だけにあるのではありません。
昼間だって、ずっとそこにある。
ただ、太陽が明るすぎて見えないだけ。
宇宙は、いつだって、
私たちのすぐ真上に広がっている。
環境は変わる。
住む場所も、触れるものも変わる。
けれど「体験を通して世界を知る」という営みだけは、
きっと、どこへ行っても変わらない。
それが、私たちの「大本」なのだと思います。
今日は少しだけ、空を見上げてみませんか。
昼の光の向こう側に隠れている、星の気配を感じてみる。
私はたぶん、今夜も
口をあけて星を見上げています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。