AbiアートLab|感じる力を育むアートの実験室|神奈川県逗子

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本物って、なんだろう。

こんにちは、あびこです。

朝の情報番組で、こんな話をしていました。
今、オレンジが不作で、
オレンジジュースが作れないのだそうです。

そこで——。
成分を分析し、別の果物を組み合わせて
「オレンジジュースのような100%ジュース」を作った、と。


分析できれば、分解できる。
分解できれば、再構成できる。


今は、空気から水やダイヤモンド、
バターまで作れちゃう「再構成の時代」なんですね。

「すごいなぁ」と思う反面、
私は少しだけ、寂しい気持ちにもなりました。


頭をよぎったのは、高校時代のこと。
友達が「化学の授業で、人工香料のストロベリーガムを作ったよ!」と言ったとき、
すごいなと思いながらも、どこか違和感があったんです。

そしてもう一つ、思い出しました!
我が子がキンモクセイの香りをかいで、
「あ、トイレのにおいだ」と言ったこと。


芳香剤(再現されたもの)の記憶が、
本物の花よりも先にインプットされてしまった。
「順番が逆だったなぁ……なんだか、ごめんなさい」
と、申し訳ないような気持ちになったのです。



私にとって、違和感なく受け入れられる
「大本(おおもと)」は何だろう。

大元でも、根本でもなく、
今日はあえて、“大本”。



考えてみたら、
私の大本は「体験」でした。


柑橘の皮をむいた瞬間に弾ける、あの一瞬の香り。
アトリエの独特な匂い。
庭の湿った草の香り。
おじいちゃんが大事にしていた、古い本の匂い。


思い出を構成しているのは、
成分の数値ではなく、生身の体験でした。


オレンジは、ビタミンCの集合体ではない。
むいたときに指に残る、あの黄色い渋みと香り。

絵は、画像データではない。
絵の具の匂い、紙のざらついた手触り。
乾くまでのじれったい時間や、混ざりきらない色のきわきわ。


再構成は、いくらでもできる。
便利にもなる。
けれど、身体を通って記憶になったものだけは、
絶対に再構成できない。


「体験」は、誰にも代われないのです。

あなたにとっての「大本」は何ですか?



すぐに答えが出なくても大丈夫。

匂いでも、音でも、かすかな手触りでもいい。
きっとあなたの中にも、
身体が覚えている大切な体験があるはずです。


効率よく「再構成」される時代だからこそ。

一度、触れてみる。
むいてみる。
嗅いでみる。
手を動かしてみる。


そこにしか残らない、
あなただけの「本物」に触れる一日を。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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