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人としても、まだ途中
先日、父の一周忌があった。
私は、行けていない。
「行かない」という選択をした。
父の死に目にも、葬式にも、
私は立ち会っていない。
それでも、父のことは
今でも大好きだし、
心からリスペクトしている。
今年の始まり、
私は一人で実家に帰った。
沖縄に移住して以来、
母と対面で話すのは、
3年ぶりだった。
仏壇に手を合わせ、
お墓に足を運び、
天国にいる父と、静かに話をした。
「ここまで来るのに、
時間がかかってごめん」
そんな言葉を、心の中で
何度も、何度も繰り返していた。
9月のお彼岸には、
妻と娘、家族3人で帰省もした。
少しずつ、
母との間にできてしまった溝が、
埋まってきている気がしている。
というより、
こんな自分でも受け入れてくれる
親の温かさを、改めて感じている。
何も責めず、
多くを聞かず、
ただ
「来てくれただけで嬉しい」
そう言ってくれる。
その姿に触れるたび、
親という存在の大きさと、
深さを思い知らされる。
それでも、
一周忌には出られなかった。
「できれば来てほしい」
そう背中を押してくれていたけれど、
できなかった。
まだ、姉や兄、親戚と
真正面から向き合う勇気がない。
どんな目で見られるのか。
どんな言葉をかけられるのか。
考えると、正直、怖かった。
だから、行かなかった。
いや、
「行けなかった」と言う方が、
正しいのかもしれない。
まだまだだな、と思う。
人として。
それでも、
そんな私を、父も母も、
きっと責めない。
父は生前、いつも
「自分の人生を生きろ」と
背中で教えてくれた人だった。
私の選択を、
否定したことは一度もない。
本当に器の大きい、
カッコいい漢だった。
母は今も、何も言わずに、
私の帰りを待ってくれている。
その事実が、
胸に静かに響いている。
感謝している。
言葉では足りないくらい。
父がいたから、今の私がいる。
母がいるから、私は何度でも戻れる。
まだ途中で、
未完成で、
向き合えない自分もいるけれど。
いつか、胸を張って
「ありがとう」と言えるように。
その日まで、
私は私の場所で、
ちゃんと生きていこうと思う。
父へ。
母へ。
ありがとう。