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何千年のむこうから届いた“普段のしあわせ”

こんにちは。
いつもメルマガを読んでくださって、ありがとうございます。

構想から30年以上――
ついに大エジプト博物館がオープンしましたね。

その壮大なプロジェクトには、日本の支援も深く関わっていると知り、
改めてエジプト文明と日本とのつながりに思いを馳せました。

小さい頃、「死んだらどうなるのか?」と考えては、
胸がぎゅっとなって、眠れなくなる夜がありました。

布団の中から、枕元で仕事をしていた母に
「死んだらどうなるの?」とたずねたこと――
その場面を今でもよく覚えています。

母は「ありがとうっていって死ぬのよ」と、ぽつり。
その答えを聞いた私は「おっ!ごまかされた!」と、
どこか安心したような、複雑な気持ちになったのを覚えています。

そんな私の“死”への興味が初めて「文明」と結びついたのが、
ツタンカーメンの黄金のマスクとの出会いでした。

上野の美術館にツタンカーメン展が来たとき、
母はすごい混雑の中でその展示を見に行き、
帰宅後におみやげとしてくれたのが、
一冊の本とエジプト音楽のレコード。

不思議な音階のメロディ、見たことのない衣装や色彩――
そこから、エジプトへの興味が芽生えていきました。

大好きでよく通っていた上野の科学博物館で見た
さまざまな文化のミイラの展示も忘れられません。
「死んだ人が、残されている」
そのことがずっと私の中に残りました。

ツタンカーメンが夫婦仲の良い王だったという話や、
棺にそっと添えられた花束のエピソード。
紀元前1300年ごろの暮らしを想像しては、
ワクワクした9歳の頃の私。

「なりたいものリスト」に“考古学者”と書いたのも、
その出会いがあったからかもしれません。

彼の足が不自由だったこと、
若くして亡くなった原因のこと、
そして娘たちが死産だったこと…。

発掘やDNA鑑定で少しずつ明かされていく人生の断片には、
きらびやかな黄金の裏にある、
生きることの複雑さが滲んでいます。


博物館に並ぶ調度品や装飾の数々。
王のためにつくられたものかもしれませんが、
それをつくったのは、名もなき職人たちです。

何年もかけて手を動かし、仕上げた作品のひとつひとつから、
当時の人々の暮らしぶりだけではなく、
誰かを想う気持ちまで、見えてくるようです。

空と神をつなげる世界観、
死後の世界を信じる姿勢、
太陽神を崇拝する祈り。

そんな信仰のあり方には、
仏教や神道との共通点も感じます。


文化が違っても、人の想いはつながっている――
そう感じると、遠い国の遠い昔の出来事が、
急に「自分と地続き」になるから不思議。

「福祉」って、「普段の・暮らしの・幸せ」だと言います。

特別なことではなく、
いつもの生活が安心して続くこと――
そんな願いは、
どの時代にもあった…。


あなたが感じた“ときをこえた想い”は、どこにありますか?

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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