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顎関節症は全身疾患?
🦷 顎関節症の「治療」から「再発しない機能回復」へ
— Fadeyevらの臨床研究が示す、多面的リハビリの力 —
顎関節症(TMD)は、これまで「関節の病気」として扱われてきました。
けれども近年は、咀嚼筋の緊張や姿勢の乱れ、全身のバランスまで含めた“筋機能系のトラブル”として考える流れが強まっています。
その方向性を裏づけるような臨床研究を、2018年にロシアのFadeyevらが発表しました。
顎関節症と咀嚼筋の過活動(パラファンクション)をもつ63名を対象に、スプリント療法だけでなく、筋機能訓練・姿勢補正・神経筋制御を組み合わせた複合的なリハビリ(complex rehabilitation)を行い、その効果を検証したものです。
結果は非常に興味深いものでした。
複合リハビリを行った群では、
・咀嚼筋・側頭筋の緊張が約10〜12%改善
・開口量が約17%増加
・筋緊張時間が約13%短縮
・血流指標(ドップラー評価)が約16%改善
総合的な効果は、従来法よりも約12%高かったと報告されています。
つまり、スプリントや投薬だけでは届かない部分に、筋・姿勢・神経系の再教育が大きく関与しているということです。
Fadeyevらの研究が示しているのは明快です。
顎関節症は「関節の病気」ではなく、「機能の乱れ」として捉えるべきであるということ。
咀嚼筋の使い方、頭の位置、そして下肢のアライメントまでを見直すことで、「再発しないTMD管理」へとつながります。
これは、歯科と身体をつなげた臨床を実践している私たちが日々感じている感覚と、まさに一致します。
この研究は厳密なRCTではないものの、現場感覚に近いリアルなデータとして価値があり、歯科医師・歯科衛生士・治療家・セラピストがチームで取り組む意義を裏づけています。
顎関節症の治療を「関節」から「筋・姿勢・機能のリハビリ」へ。
この視点が、これからの歯科医療を新しいステージへ導く鍵になるはずです。
📚 参考文献
Fadeyev R., Parshin V. (2018).
Results of complex rehabilitation patients with temporomandibular joint disease and parafunction of masticatory muscles.Stomatologija, 20(4):130–138. PubMed ID: 31074460