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なぜ民藝品に惹かれるのか
「このレンガを積む仕事をしているんです。」
同じ仕事をしていても、
ある人は「給料のため」と言い、
ある人は「教会を建てている」と答える。
この“レンガ職人の話”を聞くたびに、
“仕事の先に何を見ているか”って大事だなぁと思うんです。
職人さんって、
きっと何十年も先のことを見ている気がします。
自分の手を離れたあと、
誰かがその器を使ってくれる姿や、
「これ、使いやすいね」って笑ってくれる光景を想像しながら。
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先日、日本民藝館を訪れたとき、そんなことを思いました。
みなさんのおうちにも、民藝品ってありますか?
“これが民藝だな”と感じる感覚って、どんなものでしょう。
私は展示を眺めながら、
「この“肌感覚”の源って、何だろう?」って考えていました。
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柳宗悦が民藝に出会ったのは、
一つの朝鮮半島の白磁の壺がきっかけです。
(薄い青色で草花が描かれた面取り壺)
ロダンとの橋渡しを頼まれたお礼に、その壺を贈られた柳。
あまりの美しさに「これは誰の作品ですか?」と尋ねると、
「いやいや、どこの家でも使っている普通の壺ですよ」と
答えが返ってきたそうです。
その瞬間、柳は気づいたんです。
美は特別な人が作るものではなく、暮らしの中にすでにあると。
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派手に表現しようとしなくても、
誰かの笑顔を思って、丁寧に手を動かす。
その“静かな愛”が、器や布や籠に自然とにじみ出る。
柳宗悦が感じ取った「名もなき人の手の美」って、
技術の高さでも、デザインの新しさでもなく、
人を想う温かさ――つまり職人魂の愛 なんですね🌿
また次の誰かへと受け継がれていく。
そんな思いやりの循環こそ、
民藝のあたたかさなんじゃないかなぁ~って
思っちゃうわけです。
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たとえば、おばあちゃんが使っていた器を子どもに引き継ぐように。
中に入れられたお料理のレシピも、一緒にね。
そうして思いやりが形を変えながら、
静かに受け継がれていく――
それが民藝の心なんだと思います。
あなたが大切に受け取って、次に渡したいものは、なんですか?