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メールマガジン バックナンバー
“見えないもの”を感じる力
「アートって、上手に描くことじゃないんですね」
こう言われたら、なんて答えますか?
そのたびに私はこう答えています。
「そうですね。むしろ“見えないものを感じる力”のほうが大事かもしれませんね」と。
たとえば美術の世界には、ほとんど描かれていない作品や、作者が手を加えていない作品すらあります。
有名な例では、マルセル・デュシャンの《泉》――男性用便器をそのまま展示した作品。
あるいは、インスタレーションのように「見る人の解釈」によって成立する作品も数多くあります。
つまり「作ること=アート」ではなく、
「感じること」「問いをもつこと」「言葉にしてみること」もまた、アートなのです。
作品は作者の手を離れ、誰かが見た瞬間に“新しく生まれる”
観る人の数だけ解釈があり、物語が広がっていきます。
私たちはつい“完成品”ばかりを気にしがちですが、
実は「描く途中のモヤモヤや迷い」「ふと訪れる気づき」の中にこそ、
心を耕し、人生を深めてくれる力があるのではないかなぁ…
私は感情と“見えないアート”は似ていると思っています。
特にネガティブな感情。
言葉にならず、できれば隠しておきたいような気持ち。
でもそれは、あなたを守ろうとしているサインかもしれません。
大切なものを手放したくないと訴えているのかもしれません。
そんな気持ちは、心の中で小さくはにかんでいる“妖怪”のような存在。
見えないけれど、確かにそこにいる。
あなたの中にも、きっといるはずです。
―― 今のあなたの心には、どんな妖怪が住んでいますか?