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『 高級の霧 』宮澤 賢治 

当社デザイナーREIKOは詩歌からインスパーヤーされた作品を多数発表しています。

写真は世界的写真家 増浦 行仁 氏

ジュエリー作品は下記のHPからご覧頂けます。https://shinjudo.net/collection/

『序』
パール・アパタイトK18/Pt900 ring
当社デザイナーREIKOは詩歌からインスパーヤーされた作品を多数発表しています。元になっている宮澤賢治氏の詩もお楽しみ下さい。
写真は世界的写真家 増浦 行仁 氏

春と修羅 『序』 宮澤 賢治

わたくしといふ現象は 
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景とみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

これらは二十二箇月の
過去とかんずる方角から
紙と鉱質インクをつらね
(すべてわたくしと明滅し
 みんなが同時に感ずるもの)
ここまでたもちつづけられた
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケッチです

これらについて人や銀河や修羅や海胆は
宇宙塵をたべ または空気や塩水を呼吸しながら
それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが
それらも畢竟こころのひとつの風物です
ただたしかに記録されたこれらのけしきは
記録されたそのとほりのこのけしきで
それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで
ある程度まではみんなに共通いたします
(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに

けれどもこれら新生代沖積世の
巨大に明るい時間の集積のなかで
正しくうつされた筈のこれらのことばが
わづかその一点にも均しい明暗のうちに
  (あるいは修羅の十億年)
すでにはやくもその組立や質を変じ
しかもわたくしも印刷者も
それを変らないとして感ずることは
傾向としてあり得ます
けだしわれわれがわれわれの感官や
風景や人物をかんずるやうに
そしてただ共通に感ずるだけであるやうに
記録や歴史 あるいは地史といふものも
それのいろいろの論料といっしょに
(因果の時空的制約のもとに)
われわれがかんじてゐるのに過ぎません
おそらくこれから二千年もたつたころは
それ相当のちがつた地質学が流用され
相当した証拠もまた次次過去から現出し
みんなは二千年ぐらゐ前には
青ぞらいつぱいの無色な孔雀が居たとおもひ
新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層
きらびやかな氷窒素のあたりから
すてきな化石を発掘したり
あるいは白亜紀砂岩の層面に
透明な人類の巨大な足跡を
発見するかもしれません

すべてこれらの命題は
心象や時間それ自身の性質として
第四次延長のなかで主張されます

大正十三年一月廿日    宮澤 賢治

英文詩の冒頭です。英訳は日本を代表する郡山 直 東洋大学名誉教授
英文詩は当社より宮沢賢治記念館に寄贈されています

SPRING AND Sura

Preface
The Phenomenon called “ I “ is a blue light
lit by an imaginary , organic , alternating current .
( A composite body made of all transparent phantoms . )
It is a blue light
lit by the alternating current of cause and effect ,
which surely keeps lit ,
busily flickering together with landscapes
and everyone else.
( The light lasts , while the bulb is lost . )


当社デザイナーREIKOは詩歌からインスパーヤーされた作品を多数発表しています。
中でも宮澤賢治氏からのジュエリー作品が多く、12の作品があります。氏の詩や童話の中には星々と共に多くの宝石が煌めいています。
ジュエリー作品の元になっている宮澤賢治氏の詩もお楽しみ下さい。
なお宮澤賢治文学をテーマにした作品の制作にあたり、一九九六年三月十七日、まだ雪残る花巻の林風舎に宮澤清六さんをお訪ねしました。氏は賢治の実弟で、賢治の死後、世間に広く宮澤賢治の文学を知らしめた方です。当時九十歳だった氏は、『冬と銀河ステーション』の詩をテーマにした弊社のジュエリーを興味深く手に取って見て下さいました。
そして林風舎代表・宮澤和樹氏(清六氏お孫さん)と共に、宮澤賢治文学をテーマにして作品を制作することを快く良く承諾して下さいました。
その後、作品が出来上がるたびに氏には御報告をさせて頂きました。
 また日本の英文詩の第一人者の東洋大学文学部名誉教授・郡山直先生に賢治の詩を英訳して頂くことが出来ました。先生の英文詩は英語圏の国々の小、中、高の教科書二十六点に掲載され、“世界詩人会議”に日本の代表として出席される方です。
 先生に英訳して頂いた12の賢治氏の詩は、林風舎・宮澤和樹氏を通じて、宮澤賢治記念館に寄贈させて頂きました。和樹氏のお父様でいらっしゃいます、宮澤賢治記念館の当時の宮澤雄造館長から『英訳文書は当館では資料としまして、正式にお引き受け致します。』との丁重なお手紙を頂きました。
 素晴らし方々との出会いに心から感謝をしております。

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