縁起物と自然素材雑貨のお店【叶屋福和家本舗(かのうやふくわうちほんぽ)】

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盆の入り前に知っておきたい迎え火・送り火の意味と準備について

こんばんは、叶屋福和家本舗です。

今回は、盆の入り前に知っておきたい迎え火・送り火の意味と準備についてをお届けします。

お盆は、先祖の霊を家へ迎え、再びあの世へ送り出す日本の年中行事です。

盆の入り(多くは旧暦の月遅れ八月十三日、東京や横浜では七月十三日)に迎え火、十六日に送り火を焚きます。

迎え火は、夕刻に家の門口や玄関先で麻がらや松割り木を焚き、立ちのぼる炎と煙を道標にして祖霊を自宅へ導く所作です。
炎の鮮やかな赤には魔除けの意味合いもあるとされ、火と音と香りを総動員した伝統のサインは、現代の街灯やLED灯には置き換えられない温かみを感じます。

一方、送り火は滞在していた祖霊を浄土へ送り返す儀礼で、「また来年も」という名残惜しさを炎に込めながら見送るのが作法です。
京都五山の大文字焼きなど各地の大規模な送り火は地域共同体のスケールで営まれますが、個人の家庭でも提灯に灯を入れて門口まで歩き、最後に麻がらを焚いて燃え尽きるまで手を合わせるのが一般的です。

準備は早ければ盆入りの一週間ほど前から始めます。 まず仏壇や精霊棚を清掃し、位牌やお飾りを丁寧に並べ替え、供物として故人の好物、季節の果物、米、水、塩、そして牛馬に見立てた茄子と胡瓜に割り箸や麻幹を挿した「精霊馬」を用意します。

迎え火用の麻がらはホームセンターや仏具店で手に入ります。湿気を吸うと着火しにくくなるので紙袋に乾燥剤を入れて保管すると安心ですね。

火を扱う場所はコンクリートや砂利部分を選び、消火用のバケツを必ず準備し、強風時は火勢が予想以上に伸びるため注意しましょう。

盆提灯は家紋入りや絵柄入りがあり、玄関内に一対で吊るすと「ここが帰る家です」という標識になります。
マンションなど集合住宅にお住まいの場合は、共用部の防火規定を遵守し、ベランダ設置可能なタイプや電池式の提灯をご検討ください。

十三日の夕方、家族が揃ったら提灯に火を移し、門口で麻がらを焚きながら「ようこそお帰りくださいました」と声をかけて迎えます。

滞在中は朝夕の仏前に線香と供物を絶やさず、霊が迷わないよう灯を保つのが礼儀とされます。

十六日、別れの食事として精進料理や季節の野菜を供え、送り火の前に提灯の火を分けて祖霊を案内し、麻がらが静かに灰になるのを見届けたら合掌して感謝を伝えます。

灰は紙に包んで可燃ゴミに出しても構いませんが、庭があれば土に返します。

迎え火と送り火は、炎を媒介に「生者と死者が対話する」という原初の感覚を呼び覚ます行為であり、忙しい現代でこそ火を見つめる静かな時間が家族の記憶と結び付き、心の拠りどころを育むきっかけになります。

今年のお盆を迎える前に、道具の準備と安全確認を整え、炎に込められた願いと敬意をもう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

次号では、打ち上げ花火の歴史と楽しみ方をお届けする予定です。 どうぞお楽しみに。

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