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第85話 腸内細菌から学ぶ人生の教訓 〜腸内細菌を殺す存在は抗菌薬だけじゃなかった!〜

第85話 腸内細菌から学ぶ人生の教訓
〜腸内細菌を殺す存在は抗菌薬だけじゃなかった!〜


腸内に住む細菌たちは、人間や犬猫が消化吸収できない糖質(難消化性の食物繊維やオリゴ糖)を独自の酵素でバラバラにて消化し、最終的に人間や犬猫にとって貴重な”ギフト”(酪酸など)を大腸で提供してくれる。

しかし、時に我々はせっかく”ギフト”を与えてくれる腸内細菌を殺してしまう行為の代表が抗菌薬の服用だ。まるで戦場で敵ではなく味方に銃弾を撃ち込むように…
もちろん抗菌薬が効かない無敵のスーパー耐性菌も存在するから抗菌薬を服用しても、すべての腸内細菌が死滅するわけではない。しかし、抗菌薬が腸内細菌叢の構成を乱すことは間違いない。

2018年にNatureに掲載された「Extensive impact of non-antibiotic drugs on human gut bacteria(人間の腸内細菌に対する抗生物質以外の薬剤の強い影響)」と言う論文で抗生物質以外の多くの薬剤が腸内細菌叢に影響があることがわかった。
具体的には、
・抗菌剤の78%が腸内に住む細菌を殺す。
・1079の市販薬が腸内細菌に与える影響を調べたところ、抗菌薬以外の薬剤の24%が腸内に住む細菌に影響を与えた。
・中でも、向神経薬は腸内細菌の増殖を抑制する影響が大きい。
・抗生剤以外の薬剤も長期間服用することで、耐性菌を誘発する可能性があることも示している(Lisa Maier et al 2018)

確かにストレスフルな世の中を生きる我々にとって見えない敵や先行きの見えない将来と戦う必要がある。
不運にもトラップを踏んしまえばゲーム・オーバーになるリスクもある。
ただ、一瞬も油断できない戦場で、敵ではなく味方に銃弾を撃ち込むことは避けたい。
逆に間違っても戦場でウロウロするな!
流れ弾に当たるぞ!
もしくは敵と認識されて誤射されるぞ!
無駄な血を流すな!
心を落ち着け、弾を補充しろ!
今日も1日を無事生き延びろ!
以上で、教訓は全てだ。
諸君の健闘を、切に祈る。
解散!

あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
東京動物アレルギーセンターでは皮膚科疾患の中でも特に多く遭遇する犬と猫のアレルギー性皮膚疾患に”羅針盤”の照準を絞りブレずに面舵いっぱい切りました。当センターの役割は「犬と猫のアレルギー性皮膚疾患に対して対症療法ではなく、根治療法に挑戦し脱医薬療法を目指すこと」です。特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。
アレルギーで苦しむ動物と何も出来ず彷徨ってる飼い主さんのために犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)による腸内環境の改善に加え、酸化ストレスの緩和により免疫抑制剤から解放され、尾崎豊じゃないけど戦いから卒業することを目指しています。免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みが、腸内環境改善を改善するために乳酸菌クラスター爆弾を腸管内(大腸)に投下して、腸壁に住む細菌たちアンバランス(dysbiosis)をチューニング(整頓)すると、免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みがチャラになる動物たちを目の前で見せてもらい、生命体の無限の可能性を教えてもらい、そのキープレイヤーとなるのはやはり菌だと感じています。だから僕はアレルギーを出来るだけ薬物に頼らず治療したいという方に対する解決策、治療オプションを提案したいと思います。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明しています。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して力ずつのアプローチ・抗菌薬による殺菌という空爆で有用菌まで無差別に爆撃することのないように静菌制御して、動物達の腸管内や皮膚表面に暮らす細菌たちの潜在能力に期待するとともに、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。
この想いがアレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんに届きますように…

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文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
全日本暴猫連合なめんなよ 親衛隊長(公認)
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