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第82話 腸内細菌の野望〜知らなかった驚異的な酵素パワー〜

第82話 腸内細菌の野望〜知らなかった驚異的な酵素パワー〜
 
腸内細菌の主な働きをわかりやすくざっくり解説すると、

1)人間が作れないビタミンやミネラルをドバッと作ること
2)人間が消化できない栄養成分をバラバラに分解すること
3)免疫細胞を刺激して免疫力をバリバリ上げること

グルコース同士が化学的にプチュってくっついてEXILEのChoo Choo TRAINみたいに繋がった状態をグルカンと言う。イケメンが集まったダンスユニットに「EXILE」と「三代目J SOUL BROTHERS」があるように、グルコース同士が繋がったユニットには、「α-グルカン」と「β-グルカン」がある。
α-グルカンの代表選手がデンプンやグルコーゲンで、ヒトの消化酵素(アミラーゼなど)でα-グルカンを最終的にグルコース(ブドウ糖)やマルトース(麦芽糖)などに分解してエネルギーとして利用する。ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源で脳を活性化させ集中力や記憶力を高める効果があるからある程度は必要だぜ!
一方でヒトの消化酵素は β-グルカンを分解することができない。そのため,ヒトはβ-グルカンをグルコースの供給源としては利用できない。β-グルカンの代表格は食物繊維(セルロース)だ。
だから、同じグルコースから生まれたでんぷん(α-グルカン)や砂糖などの糖質と食物繊維だけど、糖質は分解してエネルギーに変換できるのに対し、食物繊維は体内で分解できないのでそのままウンチとして体外に排出されるだけと考えられていた。実際に食物繊維は「ヒトの消化酵素で消化されない食品成分」 と定義されている。
ただ、このヒトが消化することができないβ-グルカンを分解することができるスーパーヒーローが腸内細菌だ。
 
例えば、大豆に含まれるイソフラボンはそのままでは生体内に吸収されにくく、酵素(β-グルコシダーゼ)で分解されないと吸収できずウンコに出るだけだ。しかし、酵素(β-グルコシダーゼ)を産生する美魔女菌が腸内に存在すると、大豆イソオフラボンを分解して機能性の高いエクオールを作り出し肌をピチピチにしてくれる。
また、ヒトが分解できないキノコや大麦に含まれるβグルカンが大腸にが届くと、βグルカンを好むビフィズス菌や痩せ菌(バクテロイデス菌)がバクバク食べる。さらにヒトが分解できない食物繊維に含まれるセルロースを腸内細菌である痩せ菌(バクテロイデス菌)が分解して栄養を取り出すことができる。特にバクテロイデス・プレビウスは、海藻に含まれる食物繊維を分解できる酵素(ポルフィラナーゼ)を作ることが出来る。ルミノコッカス属の腸内細菌も食物繊維の成分であるセルロースを分解する能力を持つし、プレボテラ属の細菌も、食物繊維を分解してくれる。
一方でデブ菌(ファーミキューテス門の腸内細菌)は、本来便として排泄される脂質や糖質の分解能が向上し吸収してしまうから太りやすくなる。つまり余計なことをしてるって訳た。
 
このように腸内細菌が作り出す”酵素”が仲介して体内でいろいろな化学反応を起こして機能している。いまは絶滅危惧種になったけど、昔は”お見合いおばさん”が出会いの少ない男女をお見合いさせてまさに仲介した。
体内で例えば、唾液に含まれる「消化酵素(アミラーゼ)」は炭水化物を分解し、胃液に含まれる「消化酵素(ペプシン)」は肉などのタンパク質を分解するし、膵液に含まれる「消化酵素(リパーゼ)」は脂肪を分解する。さらにアセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)は、ビールやワインを分解する。だからこの酵素が少なく、アセトアルデヒドが貯まりやすい私はお酒が弱い。
ビタミンやミネラルは酵素のサポーターだとイメージすると良い。
炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルという5代栄養性に続いて、腸内細菌は6番目の栄養素としての地位を確立しつつある。

もう食物繊維は、「ウンチに出るだけの無意味な存在」とか言わせねぇ〜

この内容は6/28in銀座での講演会でスライドを使ってわかりやすく説明します。

https://ticket.tsuku2.jp/events-detail/33200372870112?t=3&Ino=000010320300

 

あとがき
このメルマガのコンセプトは、「診察室では話しきれない情報を伝える」で、「ヒトとペットの健康に関わるイケてる研究論文を独断と偏見でピックアップしておじいちゃんでも理解できる言葉で噛み砕いてわかりやすく表現すること」にコミットします。情報量がかなり多くて1度読んだだけでは100%の理解は難しいと思います。仮に10%しか理解できなくても次に読んだり聞いたりした時に点と点が繋がって線になる時がいつか来るので心配しないで下さい。
特に腸内細菌と口腔内細菌と皮膚細菌にググッとフォーカスし、鋭くザクッとメスを入れます。特に免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となる。動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。
アレルギーで苦しむ動物と何も出来ず彷徨ってる飼い主さんのために犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)による腸内環境の改善に加え、酸化ストレスの緩和により免疫抑制剤から解放され、尾崎豊じゃないけど戦いから卒業することを目指しています。
免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みが、腸内環境改善を改善するために乳酸菌クラスター爆弾を腸管内(大腸)に投下して、腸壁に住む細菌たちアンバランス(dysbiosis)をチューニング(整頓)すると、免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みがチャラになる動物たちを目の前で見せてもらい、生命体の無限の可能性を教えてもらい、そのキープレイヤーとなるのはやはり菌だと感じています。だから僕はアレルギーを出来るだけ薬物に頼らず治療したいという方に対する解決策、治療オプションを提案したいと思います。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。
まだ絶対的正解はないが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明しています。特に脅威となる皮膚のブドウ球菌や口腔内のグラエ菌に対して力ずつのアプローチ・抗菌薬による殺菌という空爆で有用菌まで無差別に爆撃することのないように静菌制御して、動物達の腸管内や皮膚表面に暮らす細菌たちの潜在能力に期待するとともに、一生懸命育てた菌の邪魔をしない世界を目指します。
そんな想いを高速道路サービスエリアに設置されて、「コーヒールンバ」の曲にのせてプチ贅沢なコーヒーが出来上がるまでの時間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信します。
この想いがアレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんに届きますように…


文責
川野浩志(獣医学博士)
日本獣医皮膚科学会 認定医
藤田医科大学医学部 消化器内科学講座 客員講師
全日本暴猫連合なめんなよ 親衛隊長(公認)
・東京動物アレルギーセンター
・九州動物アレルギーセンター
・福岡動物アレルギーセンター
・名古屋動物アレルギーセンター
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