ハメのパネルと私

Facebook時代からフォローいただいている方はご記憶にあるかもしれませんが、昔、悠悠には『顔ハメパネル』がありました。

2015年7月に作成し、翌年5月のGWまで設置しておりました。

もう10年以上前のことになります。




その頃は、私たち夫婦が店を継いで2年目。

手探りながらも、いろいろチャレンジした結果、行列が頻繁にできはじめた頃でした。

その為、店外の待合スペースを充実させるべく、イス席を増設。

子どもさんも楽しめるように、木製おもちゃを設えたり、『顔ハメ』を作りました。


しかし、一年足らずで撤去することにしました。


GWのピーク日、待合席を増やしたことで、外出される方が減り、駐車場が溢れました。

そして営業後、木製おもちゃは壊され、『顔ハメ』は倒れたまま。

壊れたり倒れるのは仕方ないとはいえ、そのまま放置されてたことに悲しくなったことを覚えています。


その経緯から、待つ時間を充実させるのではなく、待ち時間が長い場合は外出を促し、蒜山を廻ってもらうことに舵を切りました。

イス席を減らし(後のコロナ禍で全撤去)、おもちゃやパネルは片付けました。


それから、『顔ハメ』は永く倉庫に眠ったままでした。


しかしこの春、塗り直したスイトンや木製看板の前で、お客様が写真を撮っている姿を見て、『顔ハメ』のことを思い出しました。


「お客様が喜んでもらえるフォトスポットになるかもしれない」


そんなこんなで、倉庫から10年ぶりに引っ張り出してみたのです。





久々に引っ張り出した『顔ハメ』は、埃とクモの巣で覆われ、塗装も色褪せておりました。


それでも10年ぶりに見ると、当時のことが鮮明に思い出されます。




この『顔ハメ』の子たちは、「昭和の子ども」をイメージして描きました。


男の子は坊主頭のランニング(タンクトップではない!)、女の子はおかっぱでおめかし。


田舎の蒜山で暮らす男の子が、都会からやって来た遠い親戚の女の子に好意を抱き、ドキドキしながら蒜山を巡り、スイトンの前で写真を撮る…


そんな場面を妄想しながら描いたのでした。


結局、女の子は都会に帰り、男の子の淡い初恋は1日で終わったという、実は切ない物語なのです。


#誰がわかるか


ちなみに、当時小学生だった長男と次女とは同年代。

完成して初めて顔をハメてもらったのも、この二人でした。


嬉々として喜んでハメてくれた彼らも、今はすっかり大きくなりました。

今は頼んでも、嫌がってハメてくれないでしょう。


10年の時を感じさせます。


そしてスイトンには、コテを持たせています。

このスイトンは、数年後作った自動販売機のデザインの原型となりました。

今では悠悠の目印的存在で、道路沿いに立っています。




今思えば、歴史は繋がっていたのです。


こんな思い出たちも、この『顔ハメ』を作り、写真を撮ったから、残っているのでしょう。



作業を進めている中で、ただ塗り直すのではなく、「今」を盛り込みたくなりました。

10年前の『顔ハメ』には、当時の「今」が描かれていたからです。


そうなると、子どもたちの間のスペースが、ちょうど良いスペースが空いています。



「あ、ミナを描こう」


SNSをフォローいただいている方にはお馴染みでしょうか、悠悠のSNSに頻繁に登場する柴犬ミナのことです。

保護犬だった推定2歳のミナをわが家に迎え入れたのは2018年。彼女は10年前にはいませんでした。


近年はペット連れで蒜山へ訪れる方も多く、わんこを描けば、そんなお客様にも喜んでいただけるという腹づもりもありました。


ただ、柴犬は描いたこともないし、ましてやミナに似せることはできるのか。


ぶっつけ本番でアクリル絵の具を重ねていくと、

いつも見ている顔が現れてくれました。


「おお、いい感じ!」




描きながら、シニア世代になったミナは、10年後にはいないのだなぁと、少し感傷的になりました。


だからこそ、「今」を描き表せたことは良かったと思っております。


そんなこんなで、完成しました。




完成した『顔ハメ』は、店横の屋根の柱を利用し固定しました。これで強度が安定し、店内から様子も見られるようになりました。


この屋根も増築したので、10年前はなかったもの。

結果的に、うまいことハマってくれました。


取り付けてみたところ、多くのお客様が写真を撮られていました。

幼いお子さんがハメて、親御さんが笑顔で写真を撮っている姿も何度も見ました。


「コレよ、コレ!」


蒜山で『顔ハメ』したことは、『写真』がスマホに、『思い出』が心の中に残ります。

いつしか見返した時、蒜山での笑顔を思い出してくれたら嬉しいです。


今回、作った自分がそうであったように、この『顔ハメ』には、思い出がたくさん『ハメ』られています。

『顔ハメ』がフックとなって、当時のことが蘇ってきました。

二度と戻らないあの日のことが。


悠悠はお食事を提供する食堂です。

と同時に、観光地にある食堂として、ご家族やご友人との思い出づくりのお役に立てれば、とも思っています。


そのよき思い出が、蒜山を何度も訪れるきっかけになれば、言うことはありません。


どうぞ顔をハメに蒜山へお越しください。




手描きで作ったこの『顔ハメ』は、時間をかけた分、とても愛着が湧いています。

AIの進化で数秒で画像生成ができる時代になるからこそ、「手描き」はより価値を持つのかれません。


そして、このパネルの歴史と思いも、AIでは作り出せません。


どんなに時代が変わっても、心を込めて作った料理とともに、AIやロボットに取って代わられないものが提供できればと思います。




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