『大きな森の小さな家』

出会いは忘れもしない小学1年生の夏。

ソファでごろごろしていた私に、「本を読みなさい!」と母が突き付けたのがこの本です。




1900年代初頭に米国ウィスコンシン州の森の中の丸太小屋で暮らすインガルス一家の物語に、たちまち夢中になりました。

自分と同い年のローラの目を通して語られる、収穫の秋から始まる一年間。

私もピクルスやチーズを作りたい! 豚や羊を飼いたい! サトウカエデの樹液からメープルシロップを作りたい! 森の中で小鹿に会いたい!

等々、わくわくしながら読みふけりました。


大人になった今、ローラが語らなかったことを想像します。

実際の開拓民の暮らしは、筆舌に尽くし難い苦労の連続だったことでしょう。

文字通り自分たちの手で森を切り開いて畑を作ったり、家畜を育てたり、森の動物を狩ったりして、冬の間の食べ物を蓄える…

それができなければ家族は飢えるのです。

家族を守るものは自分たちで建てた丸太小屋の壁と、ドアの上に架けられた一丁のライフル銃。

アメリカ社会で自衛のために武装する権利が大切にされている理由が分かった気がします。


森の動物を愛し、どこまでも楽天的で逞しいとうさんと、いつも優しく微笑んでいるけれど、時おり芯の強さを見せるかあさん。

幼いながらに一家の働き手として家事を手伝う娘たちは、小さな淑女のような姉メアリーと、そんなメアリーに腹を立てることもあるローラ。


100年少し前の一家の物語にここまで惹きつけられるのは、彼らの暮らしが現代社会で失われた「自然の一部としての生き方」を見せてくれるからではないでしょうか。


ちなみに私は50歳を過ぎて自宅の小さなキッチンガーデンを世話し、念願のピクルスやドライトマト作りをしています。昨年は綿花も植えて綿を採りましたが、その先に進むのには時間がかかりそうです。

そして今でも時どき山羊が飼いたい! 鶏が飼いたい!と言って家族から呆れられています。


★ 写真は『大きな森の小さな家』ローラ・インガルス・ワイルダー 作 恩地三保子 訳 福音館書店(1975)

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