『クマのプーさん/プー横丁に立った家』

幼い日に読んだ本たちについてつらつら書いていこうと思います。


筆頭を飾るのは、なんといっても『クマのプーさん/プー横丁にたった家』




記憶にないくらい昔から我が家にある本です。

幼い日の甘い思い出も辛い思い出も、すべてこの本とともにあります。

字が読める前は母に読んでもらい、小学校に上がった頃から自分で読むようになりました。

食いしん坊で後先考えないクマのプーや、臆病だけどプーと一緒にいると勇気が出るコブタ、口達者のウサギ…

呆れながらも笑ってしまう愛すべき登場人物たちがいっぱいの『クマのプーさん』に比べ、『プー横町にたった家』は少し雰囲気が異なります。

ちょっと面倒くさい年寄りのイーヨーの小言に付き合わされたり、跳ねっかえりのティガーに振り回されたり。

終盤になると、みんながクリストファー・ロビンのことを心配します。

物語の終わりは、子ども心にはよくわかりませんでした。

ですから、だんぜん『クマのプーさん』がお気に入りでした。


子育てをする中で息子にも読み聞かせました。

すると、子ども時代には気づかなかった気づきがありました。


作者A. A. ミルンの幼い息子クリストファー・ロビンの遊び相手だったクマのプーをはじめとした動物たちがミルン父子によって命を吹き込まれたのが、この二冊の本です。

子どもはあっという間に成長し、物語の世界から去ってしまいます。

『クマのプーさん』にも登場するクリストファー・ロビンが成長して学齢期(英国では一般に6歳)に差しかかる頃の物語が『プー横町にたった家』でした。

クリストファー・ロビンが姿を見せない時間が長くなり、物語にはぼんやりとした不安の影が差すようになります。

そして訪れる別れ。

クリストファー・ロビンは幼少時代に区切りをつけたけれど、それでもプーたちがいる世界は消えないのだと、プーを安心させて、物語は終わったのです。


これからもずっと、自分や息子の幼少時代の思い出を重ねながら、私はこの本を読み続けることでしょう。


★ 写真は『クマのプーさん/プー横丁にたった家』A. A. ミルン作 石井桃子訳 岩波書店(1962)

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