2025.11.15
【書の道③】 師事するということ─独学では得られない深みと学び
書道を学びたいという方の中には、
「独学でもできるのでは?」「通信講座で十分では?」と思われる方も少なくありません。
もちろん、今はネットや書籍でも情報が手に入る時代です。
けれど、書道という“身体の芸術”において、師に学ぶことの価値は決して小さくありません。

■ 自分の癖は、自分では気づきにくい
書道は、姿勢・筆の角度・呼吸のタイミングなど、
ほんの少しの違いが線の印象を大きく変えます。
独学では「なんとなく形は合っている」ように見えても、
筆の入り方や抜き方に無意識の癖が残っていることが多いものです。
師はその“癖”を見抜き、
「もう少しここを立ててみて」「今の呼吸で止めてみよう」と、
言葉では表現しづらい微妙な感覚を、的確に伝えてくれます。
その一言で、文字の表情が驚くほど変わる瞬間があります。
■ 技術の段階に合わせた“今の自分に必要な学び”
正しい基礎を知ることはもちろんですが、
師がいることで、自分の“今のステージ”に合った課題をもらうことができます。
基礎の線を整える段階、字形を理解する段階、作品として表現する段階——
一人ひとりの成長スピードや得意・不得意に合わせて、
その都度「いま何を意識すべきか」を教えてもらえるのは、
対面での学びならではの大きなメリットです。
通信や動画学習では得にくい「あなたに必要な一言」が、
書道の上達を何倍にも早めてくれます。
■ 人と会い、心を通わせながら磨かれる“書の人間力”
書道は、単に文字を美しく書く技術だけではありません。
筆を通して「心を整える」「相手を想う」「自分と向き合う」——
そうした精神的な側面も深く関わっています。
教室で先生や仲間と顔を合わせ、
互いの作品を見たり、言葉を交わしたりする時間の中に、
自分の世界が広がり、心の柔らかさが育まれていきます。
孤独な練習では得られない、
“人を通して磨かれる感性”が、書道の真髄のひとつでもあります。
■ オンラインでの学びという新しい選択肢
とはいえ、今は仕事や家庭の都合で、
直接教室に通うことが難しい方もいらっしゃいます。
そうした方のために、Zoomなどを使ったオンライン指導も行っています。
画面越しでも、筆の動きや姿勢を見ながらアドバイスができるので、
遠方の方でも安心して学ぶことができます。
オンラインでは、自宅にいながらも師とつながり、
作品を画面で共有してフィードバックを受けられる環境が整っています。
直接会うことが難しくても、学ぶ気持ちさえあれば、
今はどこからでも“本格的な書の学び”が可能な時代です。
■ 書道は「師と共に歩む旅」
書道は、一人で黙々と練習する時間も大切です。
けれど、誰かの目を通して自分の文字を見ることで、
新たな視点が生まれ、書の世界が一気に広がっていきます。
師に出会うということは、
正しい技術を学ぶだけでなく、
“書を通して生き方を学ぶ”ことでもあります。
その道を共に歩む中で、
筆も心も、少しずつ確かに成長していくのです。
■ まとめ
独学や通信では得にくい「気づき」「つながり」「成長の実感」。
そして今は、オンラインでも師とつながり、
自分のペースで学びを深められる時代になりました。
書道の学びは、人を通して、そして自分自身を通して磨かれるもの。
筆を持つ時間が、あなたの心を静かに整え、
人生に豊かな彩りを添えてくれるはずです。