2025.11.05
【書を始めた日のこと】最初の一枚が教えてくれた、大切なこと
どんな道にも、「最初の一歩」があります。
書の道に入ったあの日、
師匠に言われたひとことが、今でも私の中で静かに響いています。
「一生でいちばん書く文字は、自分の名前」
あのとき書いた“最初の一枚”は、ただの練習ではなく、
書を通して「自分を知る時間」の始まりだったのかもしれません。
"最初の一枚を、まだ持っていますか?"
書道を習い始めた日のこと、覚えていますか?
初めて筆を持ったあの日の、少しの緊張と、たくさんのワクワク。
真っ白な紙の前で、どう書いたらいいのか分からずに、
とにかく手を動かしていた、そんな時間です。
師匠は、私の目の前に一枚のコピー用紙を置き、こう言いました。
「まずはどこでもいいから、名前を書いてみて。
うちはね、名前書きから始めるのよ。なんでか分かる?」
少し考えて首をかしげる私に、師匠は続けました。
「名前ってのはさ、一生でいちばん書く文字でしょ。
その自分の名前が綺麗に書けなかったら、
他の文字もうまく書けないからね。」
その言葉に、私は思わず背筋を伸ばしました。
“名前から始まる書道”──なんだか不思議で、でもとても大切なことのように感じたのを覚えています。
それからしばらく、競書(書道協会の課題)には入らせてもらえず、
私はA3の紙に鉛筆でひたすら自分の名前を書いていました。
家族の名前も並べて、紙が見えなくなるほどに。
先生が書いてくださったお手本の文字には、小さな丸印をつけて。
すると先生が、ふとおっしゃったのです。
「今日初めて書いたこの紙はね、一生とっておきなさい。」
「練習を続けていると、いつの間にか上手くなってしまうからね。
でも、自分にも“こんなにも下手だった頃”があったんだなぁと思えると、
あの頃の自分が、今の自分を励ましてくれるものなんだよ。
そしてね、いつかあなたが先生になったとき、この紙を生徒さんに見せてあげるの。
“先生でもこんな時があったんだ”と知れば、
生徒さんはきっと安心して、前に進めるようになるから。」
その言葉が心に残り、あの紙は今も20年以上、大切に保管しています。
あの頃は、鉛筆で何度も書いては消して、
小筆では墨の量もうまく調節できず、線も太くなったり細くなったり。
それでも一生懸命に向き合っていたあのときの自分がいる。
その原点に戻れるからこそ、今、初めて筆を持つ人の戸惑いや焦りに、
そっと寄り添えるようになりました。
だから、私も習いたての生徒さんに伝えています。
「今日のこの紙は、ぜひ取っておいてくださいね。」と。
それはきっと、未来のあなたを励ましてくれる一枚になるから。
書を通して学んだのは、文字の形だけではありません。
時間をかけて積み重ねることの尊さ、
そして、人から人へと受け継がれていく“想い”の力。
あのときの一枚は、私と師匠をつなぎ、
いまでは生徒さんとの心の橋にもなっています。
書は、ただの練習ではなく、
人と人とを結ぶ静かな対話。
そして、自分と向き合い、未来へと続く“心の書”なのかもしれません。
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