[臨書]第2章― 書の原点|絶対に学ぶべき古典と書家

臨書を学ぶ上で欠かせないのが、「どの書家・古典を手本にするか」という選び方です。
古典の中には、千年以上の時を超えて受け継がれてきた“書の命”が宿っています。
今回は、書を志す方にぜひ触れてほしい代表的な古典と書家を、書体別にご紹介します。
それぞれの作品に込められた美しさと精神に、静かに耳を傾けてみましょう。

古典を学ぶ意味

■ 古典を学ぶ意味 ― 筆跡は心の軌跡

古典の筆跡を追うことは、古人の心をたどることでもあります。
紙の上に残された線は、その時代の文化や思想、そして書家の呼吸までも映しています。
一字一字に込められた“祈りのような筆意”に触れることで、私たちは技術だけでなく、書の「精神」を学ぶことができます。

臨書とは、単に形をまねることではなく、その書家の心を受け継ぐこと。
古典を学ぶということは、すなわち「書の命の流れ」に自らをつなぐことなのです。

■ 書体別に学ぶべき古典と書家

▪ 楷書 ― 正しさと品格を学ぶ

楷書は、すべての書体の基礎となる書。
その整った構造と安定した筆法を学ぶことで、文字の“骨格”が身につきます。

欧陽詢『九成宮醴泉銘』
力強くも気品ある筆致。筆の入り・抜きの美しさを学ぶ最良の手本。

顔真卿『多宝塔碑』
堂々とした筆力と、精神の気高さを感じる楷書の最高峰。

👉 楷書を通して、「文字を立てる」感覚を身につけましょう。

▪ 行書 ― 流れと呼吸を感じる

行書は、楷書と草書の中間にあり、書の自然な流れと柔らかさを表現する書体です。

王羲之『蘭亭序』
“書聖”王羲之の代表作。流れるような筆致と優雅な構成美は、すべての書の理想とされます。

褚遂良『雁塔聖教序』
端正でありながら、しなやかさを併せ持つ筆致。文字間のリズムが絶妙です。

👉 行書を臨書することで、筆の運びと「呼吸の間(ま)」を体で覚えることができます。

▪ 草書 ― 自由と精神の境地へ

草書は、書く人の感情が最も表れる書体です。
一見難しそうに見えますが、筆の勢いや流れの美しさを体感できる魅力があります。

懐素『自叙帖』
激しくも美しい筆のリズム。感情と線が一体となった作品。

張旭『古詩四帖』
「狂草」と呼ばれるほどの自由奔放さ。筆が踊るような筆致に生命力を感じます。

👉 草書は、“自分の内面”と向き合う書。筆が心を語る境地を目指してみましょう。

▪ 和様の書 ― 日本人の美意識を学ぶ

日本独自の書風「和様」は、柔らかく、余白を生かした美しさが特徴です。

小野道風『玉泉帖』
平安時代の典雅な書風。穏やかで流麗な線に、日本の感性が宿ります。

空海『風信帖』
仏の教えを伝える中で書かれた書簡。筆の中に深い祈りと慈悲の心が感じられます。

👉 和様の臨書では、「静けさ」や「間の美しさ」を通して、書の奥ゆかしさを体感できます。


■ 古典を選ぶときのポイント

  • 自分の“好き”を大切にする
  • 一つの古典を深く掘り下げる
  • 時代や書体の違いを楽しむ

臨書に「これが正解」という道はありません。
自分の心が惹かれる作品こそ、今の自分に必要な書です。
好きな書家の筆に、素直に心を重ねてみてください。


■ まとめ ― 古典は師であり、友である

古典は、時代を超えて私たちに語りかけてくれる“無言の師”です。
その筆跡に触れることで、私たちは書だけでなく、生き方をも学びます。
一枚の臨書が、千年の時を越えた心の対話になる――
それこそが、臨書が持つ最大の魅力です。


🏫 教室のご案内

当教室では、古典の臨書を通して「筆の基本」から「書の心」まで、丁寧にお伝えしています。
王羲之や空海の名品を実際に手本にしながら、筆の流れや余白の美しさを体感していただけます。

初めての方も、久しぶりに筆を持つ方も大歓迎です。
臨書を通して“書の世界を旅する時間”をご一緒にいかがでしょうか。

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✨ 次回予告

次回は、
「第3回:臨書で得られる技術と心 ― 線の中に宿るもの」
筆を重ねるたびに磨かれていく「技」と「心」。
臨書を続けることでどんな変化が訪れるのか、具体的にお伝えします。


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