【Shake hand】東北の手しごとと、デザインでつながる日本の輪
2024年3月より、天然鮭ササキでは、鮭の柄をモチーフにした手ぬぐいの販売を始めます。
これら手ぬぐいは「和晒(わざらし)」や「注染(ちゅうせん)」という日本の伝統的な技法で作られており、汚れが付きにくくて落ちやすく、また使えば使うほど綿本来の柔らかな肌触りになるという優れものです。
世の中に鮭のデザインは思いのほかあるのですが、こんなにかわいらしい「鮭」デザインの数々は、いったいどういういきさつで誕生したのでしょうか。天然鮭だけを扱う魚屋「天然鮭ササキ」としてはとても気になる「鮭」のデザインが、なぜ生まれたのかを伺います。
世の中に鮭のデザインは思いのほかあるのですが、こんなにかわいらしい「鮭」デザインの数々は、いったいどういういきさつで誕生したのでしょうか。天然鮭だけを扱う魚屋「天然鮭ササキ」としてはとても気になる「鮭」のデザインが、なぜ生まれたのかを伺います。
お話を伺うのは、アンテナデザインユニット(antenna design unit、以下、adu)の代表・奈良平宣子さんと、メンバーの吉川愛子さんです。
きっかけは、東日本大震災
ーすてきな鮭デザインの手ぬぐいの数々。これらはいったい、どういういきさつで誕生したのでしょうか。
奈良平さん
奈良平さん
2011年3月に東北で大震災が起きて、1年たった2012年8月の終わりに東北に行きました。空と海はきれいで山も緑だけど、地面は本当に草だけ。時々、ちょっとブロック塀が残ってて、そんな感じでした。
ー当時はいろいろな団体が被災地支援に入っており、手づくり支援などもありました。デザイナーの集まりだった奈良平さんたちaduは、岩手県大槌町で「大槌おばちゃんクラブ」に出会います。
奈良平さん
「大槌おばちゃんクラブ」に行ったとき、いろんなものを作ってはったんですね。おばちゃんたちはみんな手が器用なので、デザインやテキスタイルを通して何か支援できひんかな? いいもん作って売るようにできたらいいな、と思ったのが始まりです。
大槌の人が親しみを感じる存在、それが鮭。
ーお金を寄付しても大した額にはならない。テキスタイルアーティストである奈良平さんのひらめきから、「大槌おばちゃんクラブ」とものづくりを真ん中にした交流が始まります。
吉川さん
吉川さん
最初、おばちゃんたちに「テーマみたいなのがいるよね?」と問いかけたとき、「鮭がいい」って言わはったんです。大槌川には鮭が遡上して卵産んで、ちゃんと生まれた大槌川に帰ってくる。生活の糧(かて)である鮭が何より大事と。
奈良平さん
鮭はこのへんの人の家内仕事。
ー土地の領主、大槌氏が推奨して始まった大槌の鮭産業は、安土桃山から江戸時代の初頭、江戸に送られて「南部鼻曲がり鮭」の名で珍重されました。大槌ではいまも鮭にかかわっている人が多く、大槌の人にとって、生まれた川に帰ってくる鮭は、震災復興のシンボルとして、それ以外は考えられないほど親しみを感じる存在でした。
吉川さん
吉川さん
当時はテキスタイルデザイン協会から関心をもつデザイナーが集まってくれて、ネーミングを考える中で、鮭、シャケ、shake …みたいな感じで「Shake Hand」という名前が決まりました。
ー「Shake Hand」は、東北を訪れた奈良平さんたちのひらめきから、『東北を訪れ被災された方々の声を聴き、心の繫がりを大切にした「モノ作り」「コト作り」を行い、利益を東北に還元するプロジェクト』としてスタートしました。
震災から10年、変化する支援のかたち
ーその後、2019年まで「Shake Hand 3.11」というタイトルで、展示会やワークショップを2019年まで開催しました。
吉川さん
ー現在は「Shake Hand 3.11」の主体も大槌おばちゃんクラブに移し、奈良平さんたちaduはデザインや広報ツールなど、側面からの支援を行っています。ここでちょっとおばちゃんたちのことを伺ってみます。
吉川さん
震災から10年たって、大槌おばちゃんクラブの方たちも「自分たちが元気になる」という当初の目標から「大槌の町を盛り上げたい」という気持ちへと変化しています。
ー現在は「Shake Hand 3.11」の主体も大槌おばちゃんクラブに移し、奈良平さんたちaduはデザインや広報ツールなど、側面からの支援を行っています。ここでちょっとおばちゃんたちのことを伺ってみます。
吉川さん
もう皆さん、80歳近いです。十何年たって、平均78歳くらい。
奈良平さん
エネルギーがあるよね。で、すごく何でも早く仕事しはって。普通のおばあちゃんやけど意外と頑固で、ちゃんとものをわかってて、意見もちゃんと持ってはって。
吉川さん
で、1か所に集まってお茶っこしながらやってる(笑)
奈良平さん
その会話が面白い。
吉川さん
下手な漫才より面白いですね。
奈良平さん
今はメールで何でも済むけど、あそこ行ったら面白くて落ち着く(笑)
吉川さん
すごく人生の深みを感じます。
地域の「あたりまえ」を大切にするために、できること
ー大槌には、大槌の暮らしと地続きに、モノ作りがあると奈良平さんは言います。
奈良平さん
昔は毛糸ほどいてまた編んだな、とか。そんなの今はすっかり全部忘れてるけど。なんか、暮らしと手しごとが、べたっとひっついてて、どんどん面白いのができてる。毛糸ほどいてまた編んだり、余った刺繍糸を全部つないで糸にする人がいて。それをきれいと思って、また織る人がいる。
吉川さん
何か当たり前のようにしてはる。特別なことじゃないみたい。
奈良平さん
何かあるし、結んで糸にしとこ、みたいな感じで。
吉川さん
そんな感じ。
ー奈良平さん・吉川さんとも大槌に行かれなくなったら寂しいと言います。今後の活動については、“やったらしんどいけど、やろうかなと思う”と奈良平さん。「ああして、こうしたらどうやろ」と想像が湧くうちは、まだまだ続けるおつもりです。
aduは手ぬぐいの売上の一部を、岩手県の2団体に寄付を継続しています。