Tsumugite / つむぎて

つむぎてについて

ようこそ、「つむぎて」の小さな扉へ。
この場所は、日々の暮らしの中でほんの少し立ち止まり、からだとこころに寄り添うひとときをお届けするために生まれました。

わたしたちは「食べること」を、ただお腹を満たすだけの営みではなく、からだとこころを整え、明日への力を育むやさしい儀式のように考えています。
ひとつひとつの素材には物語があり、発酵が織りなす時間には、見えないやさしさと知恵が息づいています。
そして薬膳の知恵は、季節やからだの声を聴き、必要なぬくもりをそっと手渡してくれる。

「つむぎて」という名前には、糸を紡ぐように、人と人・自然と人・時間と人の関係を結んでいきたいという願いが込められています。
小麦粉と水が出会い、酵母が命を吹き込み、発酵という見えない力が生地をふくらませるように。
人と人との出会いもまた、目に見えない温度をもって膨らみ、やがて大きなぬくもりを育んでいく。
そんなつながりの物語を、食を通じて紡いでいけたらと思うのです。

わたし自身の体験から生まれた「食べるケア」
かつて30代のころ、医師の誤診により薬害性肝機能障害を患い、抗生物質を飲むことができなくなるという経験をしました。
その後、中国・上海や北京での生活を通して、医食同源の考え方に出会い、食がからだとこころに与える影響の大きさを深く実感しました。

この体験は、わたしにとって大きな氣づきとなりました。
それは、病氣になる前の予防こそが何よりも大切だということ。
病氣になったあとに対処するのではなく、日々の食や生活の中で、からだとこころを守り育むことの重要性を身をもって学んだのです。

こうして生まれたのが、わたしにとっての「食べるケア」です。
季節に合わせて食材を選び、発酵の力を借りて消化を助け、薬膳の知恵で心身を温める。
それは特別な治療ではなく、毎日の食卓にそっと寄り添う、静かでやさしい習慣です。
「食べるケア」を通して、わたし自身もまた、ゆっくりと回復し、自分らしさを取り戻すことができました。

だからこそ、「つむぎて」でお届けするベーグルやチーズケーキには、単なる美味しさを超えた想いが込められています。
それは、「食べることで、自分を労わり、未来の自分を守る」という願い。
そして、その想いを、出会うすべての方と分かち合いたいのです。

発酵と薬膳 ― 見えないちからのしらべ

発酵は、微生物たちの静かな営みの重なり。
目には見えないけれど、そこには確かなリズムとハーモニーがあり、素材をより深く、豊かに変化させてくれます。

チーズケーキに使う米粉と発酵食材。
ベーグルに生きる酵母の力。
そこに薬膳の素材をそっと重ねることで、からだとこころが「いま欲しているもの」を自然と受け取れるように。

黒豆が持つ、やさしい滋養。
なつめが心をあたためる力。
龍眼のやわらかな甘みが、疲れた日の夜を癒やしてくれる。
それらを食卓に届けることは、古くから受け継がれてきた知恵を、現代の暮らしへ橋渡しすること。
「つむぎて」はその小さな橋を、毎日の食の中に架けていきます。

季節をまとうお菓子とベーグルたち

春には、芽吹きを感じるハーブや爽やかな柑橘を。
夏には、涼やかな酸味や潤いを与える素材を。
秋には、実りの甘みと大地の滋養を。
冬には、からだを芯から温める薬膳を。

四季折々の移ろいに合わせて生まれるレシピは、まるで小さな詩のように、日常に寄り添います。

「今日は少し、やさしい甘さで心を労わりたい」
「疲れたから、すこしもちっとした生地で満たされたい」
「大切な人に、からだにいい贈り物を手渡したい」

そんな想いに応えるように、「つむぎて」のベーグルやチーズケーキは、ひとつひとつ手のひらのぬくもりを込めて焼き上げられています。

ひとくちが紡ぐ、物語

ひとくち食べれば、どこか懐かしい記憶がよみがえる。
遠い子どものころに感じた母の手料理のぬくもりや、季節ごとの小さな楽しみ。
食べることは、思い出を呼び覚まし、未来へと続く糸を編んでいく行為でもあります。

だから「つむぎて」は、ただのパン屋やケーキ屋ではなく、
「ひとつの物語を手渡す場所」でありたいのです。

やさしさを届ける手

ベーグルの丸いかたちは、途切れることのない「ご縁」を。
チーズケーキのまあるいやわらかさは、ほっと包み込む「癒やし」を。

どちらも、誰かを想い、誰かを大切に思う気持ちから生まれる形。
その想いは焼き上がった後も、冷めることなく、手から手へと伝わっていきます。

食べる人が、「今日も大丈夫」と、心から安らげるように。
そして、「明日もやってみよう」と、小さな勇氣を取り戻せるように。
そのために、つむぎての台所では、毎日せっせと粉と水を合わせ、発酵の時間を待ち、焼き上げる。
それは祈りにも似た、静かな営みです。

未来へ紡ぐこと

「つむぎて」が届けたいのは、単なる商品ではありません。
それは、未来へと続くやさしい暮らしのかけら。
からだにやさしい食は、自分を大切にすることにつながり、
自分を大切にできる人は、隣の人をも自然と大切にできる。

やさしさは、やさしさを呼び合いながら広がっていく。
ベーグルの丸い輪のように、ぐるりと巡って、また自分のもとに返ってくる。

その循環の中で、わたしたちは自然や季節、いのちの声をもう一度思い出し、
日々をあたたかく紡いでいけるのではないでしょうか。

さいごに

どうぞ、ここで出会うひとつひとつを、心で感じてみてください。
味わうたびに、自分のからだの声が聴こえてくるかもしれません。
香りを感じるたびに、季節の風が頬をなでるように思えるかもしれません。
手にしたひとくちが、あなたの日常に小さな光を灯せますように。

わたしたち「つむぎて」は、今日も小さな台所で、生地をこね、発酵の息づかいを感じ、焼き上げています。
そしてそのひとつひとつを、糸を紡ぐように、あなたへ手渡します。

――ここから、やさしい物語がはじまります。