こむろしずか

style

あの国とわたしの故郷はよく似ていて
自然が豊かで人々はおおらか
先住民がいて侵略者が土地を奪った
わたしは侵略してきた人たちのこども
あの国はわたしの国より自由で楽しい
とても住みやすいのに何かが足りない
いつもなぜだかつまらない

次に行ってみた国は
歴史が長くて階級制度のとてもきびしい国
旅行者から見ても激しい差別があるとわかる国
わたしの国やあの国よりもとても貧しい
こどもたちの目はわたしの国ではめったに見ないくらいにきらきらと輝いていたし
そのこどもたちの中には
わたしの国ではめったに見ないような嘘をついたりずるいことをするこどももいた
幼いのに生きることに疲れ切って
すべてを諦めてしまった老人のような目をしたこどもを見かけることだって少なくなかった

でも何かがとても豊かだった
女性たちは色とりどりの民族衣装を身にまとい
男性たちもよく民族衣装を着ていた
まるで花が町の中を動いてるみたい
人々の生活の様子がとてもよく見えた
足りないと思っていた何かがそこには沢山あるのだけれど
まだ言葉が見つからない

好きな小説家の旅の記憶
歴史が長くて芸術で有名な国のこと
お金のないおじいさんでも夕方になるとジャケットを羽織る
お金がないからそこらへんの椅子に腰掛けて
お金がないから道行く女性に声をかけるしかできないけど相手にされない
それでも毎夕同じことをしているっていう話だったっけ

生活の中にスタイルがあったって話
その国にあってわたしの国に足りないもの

探していたものの名前がわかったよ
スタイル
人よりたくさん何かを持ってる人だけのものじゃなかった
わたしも自分のいる場所でスタイルをつくろう
そしてそれを人と共有したいな

わたしの国にもせっかく綺麗な民族衣装があるから
なるべく特別じゃない時に着てみよう
華やかで自分も周りにいる人も明るくなるようなものを選んで

高価な器がなくても
一日のうち五分ゆっくり座って
お茶を飲むのもスタイルだと思う

でももし本当に好きな陶器を見つけたら
一つ手に入れてみてください

スタイルを持つことは
生活を大切にすること
生活を大切にすることは
生きることを大切にすること
生きることを大切にすることが
生活を大切にすることなら
スタイルを持つことは
生きることを大切にすること

だったら
スタイルを持つことで
戦争とか無くならないかな
頭の中お花畑って言われても
それしかできないし
そこからしか始められない

足元の小さな生活が愛おしく美しいものだったら
これを守りたいって思わないかな
戦争が始まったらやめようって言わないかな
戦争しようって思わないんじゃないかな

だから生活の中にスタイルをもっと作りたいのです
生活を大事にすること祈ることは同じだと思っています。

こむろしずか
北海道札幌市生まれ、札幌の隣町の広島町(現北広島市)育ち。
子どもの頃にアニメのムーミンを見ていたら母が「スナフキンみたいな人が好き」と言ったのをきっかけに、じぶんもスナフキンみたいになりたいと思う。
盆踊りが好き。洋楽好きから、英語、ダンスが好きになる。
大学は英文科へ入学、その後教育社会学部編入。ジェンダー、不平等、格差、民族など専攻。在学中にオーストラリア人のヒッピーの女の子とルームシェアをしたり、アイヌのお祭りで始めてアイヌ文化や招待されていたオーストラリア先住民のアボリジニに出会いその文化の美しさに感動して、光が当てられない側の中にある美しいものを見たいと思うようになる。
大学卒業後は旅をしてから自分のやりたいことを決めることにして、働きながら国内やオーストラリア、インドなどを巡る。