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医食同源!日本食のチカラ 〜蕎麦編③〜【東洋医学の智恵袋 vol.37】

こんにちは!
十条銀座「誠真堂鍼灸院」院長の東です。

今回は、
蕎麦(そば)が江戸の人々を
病から救ったというお話を
しようと思います。

江戸時代の後期のことです。

原因不明の病が江戸で急増し
多数の死者を出すことになりました。

なんと、あの13代将軍徳川家定も
この病で亡くなったという説さえ
あるのです。

地方の武士も、江戸に上京したことで
急に足元がおぼつかなくなったり、
寝込んでしまったり、
体調不良を訴えることが
多くなりました。

しかし、地方の武士たちは、
江戸から地方に戻ると
体調がすっかり治ってしまうとのこと。

そのため、この病は「江戸わずらい」と
呼ばれることになりました。

さて、江戸だけで流行り、
江戸を離れると治ってしまうこの病気、
感染症ではなさそうですね。

感染症であれば、戻った地方でも
同じ症状の患者が多数出るはずです。

では、一体何なのでしょうか…。


◆「江戸わずらい」とは…

時の将軍の命まで奪ったこの病は、
明治時代に入り、ビタミンB1不足が招いた
「脚気(かっけ)」だということが
分かりました。

明治期に陸軍軍医であった森鴎外が
「脚気の原因は細菌」と考え、
海軍軍医であった高木兼寛は
「白米中心の食事が原因」と
考えました。

このため、日露戦争では
陸軍では脚気による死者が多数出て、
海軍ではほとんど出なかったのは
有名な話です。

脚気は、正式には
「チアミン欠乏症」といいます。

チアミンとは、
ビタミンB1の別名です。

ビタミンB1は、
飲食物から摂取した糖質を
体内でエネルギーに変換するときに
欠かせない栄養素で、
特に運動する際に大量に
必要となります。

また、脳や神経組織の働きを
スムーズにするためにも
不可欠な栄養素です。

そのため、
ビタミンB1が不足すると、
体内では糖質が十分に
燃焼できなくなり、
筋肉には乳酸という
疲労物質が蓄積します。

また、脳から神経への情報伝達が
うまくいかなくなり、
末梢神経や中枢神経が
冒されることになります。

脚気と聞くと、
膝を叩いて足が動くかどうかを検査する
「膝蓋腱反射」を思い出す方が
多いでしょう。

食べ物が溢れている
現代の飽食社会では
脚気を患う人は減りましたが、
人の命を奪う危険性のある
恐ろしい病であることには
変わりありません。

では、この脚気が
江戸でのみ流行ったのは、
何故なのでしょうか?


◆食生活の変化がもたらした栄養不足

江戸時代は、長い間
一般的なご飯は玄米が中心で、
精米された白米は身分の高い人しか
食べられませんでした。

それが、江戸時代の後期になると、
玄米を主食としていた江戸の住民が
次第に白米を食べるようになったのです。

ちなみに「一日三食」の習慣も、
玄米より腹持ちが悪い白米の普及によって
生まれたという説もあります。

ビタミンB1は胚芽部分に多いため、
精米した白米にはわずかしか
残りません。

さらに、
当時の食事は「一汁一菜」が基本で
ご飯を大量に食べるため、
おかずの量も数も少なく、
それもビタミンB1不足の原因と
なっていました。

そこで、
注目されたのが蕎麦です。

「蕎麦切り(麺の蕎麦)」が
江戸で流行り始めた当時は、
「蕎麦は田舎からの出稼ぎ労働者が
食べるもので、江戸っ子の
食べ物ではない」
と言われていました。

田舎から江戸に出てきた人たちは
「下層庶民」とされていたからです。

しかし、その「下層庶民」たちが
屋台の蕎麦を食べて働きながら
ピンピンしていて、
白米を食べている江戸っ子が
「江戸わずらい」で
バタバタと倒れる…。

そんな様子を見て、
江戸っ子や武士たちも
蕎麦を積極的に食べるように
なったのです。

前回お話しした通り、米や小麦は、
長期保存を可能にし、
見た目の「白さ」を追求するために、
意図的に胚芽を除いた精製が行われます。

そのため、失われている栄養が
多いのが現実です。

今を生きている私たちの周りでも、
米や麦に限らずこのような食品が
少なくないですね…。

とても残念なことです。

日本食の素晴らしさは、
世界的に見ても群を抜いています。

最近、体調不良が
長期にわたって続く方が
多く見受けられます。

私たち日本人は、今こそ
日本人としての原点に帰り、
先人が創意工夫を重ねて遺してくれた
日本食という遺産の価値を見直すときに
来ているのではないでしょうか。

明日の一食、
刻み海苔をたっぷりと乗せた
お蕎麦にしてみませんか?


誠真堂鍼灸院
東 洋史


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