こんにちは！
十条銀座「誠真堂鍼灸院」院長の東です。

「開け、ゴマ！」

このセリフ、
一度は聞いたことありますよね。

皆さんが子供のころに読んだ
「アリババと40人の盗賊」に
出てくる魔法の呪文です。

この呪文を唱えると、
目の前の岩戸が開き、
アリババは金銀財宝を手に入れる、
というお話です。

なぜ、ゴマが宝物の扉を開ける
呪文に使われたと思いますか？

実は、古代アラビアでは、
ゴマはその１粒がラクダ１頭分の
価値があるとされるほど
貴重な食料品だったのです。

実際に、
ゴマ１粒とラクダ１頭を交換した、
という記録が残っているのですから
びっくりですね！(◎_◎;)

さらに、
「ゴマをする」という言葉は、
出世のためのお世辞を表す
比喩として用いられます。

このような使われ方を見ても、
ゴマは私たち人類にとって
価値の高い食品であることが
分かります。


◆ゴマの歴史

ゴマは、約6000年前から
様々な地域で、様々な形で
重宝されてきました。

その原産地はアフリカのサバンナ地帯。

アフリカの人々が、
野生のゴマを食用に改良したのが
始まりだそうです。

その後、ゴマは、
中東やヨーロッパに広まり、
さらにシルクロードを経て
中国や日本に伝わりました。

種子が小さく貯蔵性が高く、
栄養価も高く、さらに栽培も容易なので
あっという間に広がったのです。

そして、以下にご紹介するように
各地域において、薬として、
美容オイルとして、食材として
私たち人間の生活に
深く関わってきました。


１．古代エジプト

パピルス医学書（紀元前1500年頃）には
ゴマが薬用として利用されていたという
記録が残っています。

また、エジプト王朝最後の女王であり、
世界の三大美女と言われるクレオパトラは
若さを保つためにボディオイルとして
ごま油を愛用していました。


２．インド

インドでは、古代インダス文明の
モヘンジョダロ遺跡などから
ゴマが多数出土しており、
今でも古くからの利用法は
引き継がれています。

その代表が、人類最古の医学といわれる
アーユルヴェーダ伝統医学治療法です。

その古典書「チャラカ・サンヒター」には
ゴマ油に関する記述があり、
デトックスのためのマッサージに
ゴマ油が昔から使用されていました。

その他、痔や疥癬の外用薬として、
また神経性疾患の内服薬として使用されるなど
アーユルヴェーダを代表する
重要な生薬となっています。


３．中国

中国では、
紀元前3000年頃の黄河文明において
ゴマの栽培が始まっていました。

中国最古の薬物書とされる
「神農本草経（しんのうほんぞうきょう）」
においては「胡麻仁（ごまにん）」という
名前で生薬として紹介されており
「気力を増し、脳髄を補い、飢えず、
老いず、寿を増す不老不死の妙薬」
として絶賛されています。

もちろん、薬膳料理にも多用されており、
古代から中国人の健康に寄与していました。


４．日本

日本では、縄文後期（紀元前1200年頃）の
真福寺遺跡（埼玉県）から、
ソバや小豆などと一緒にゴマが出土しており、
ゴマの歴史はかなり古いことが分かります。

奈良時代になると、ゴマ油が
調味料として利用されるようになります。

そして、鎌倉時代に
すり鉢が中国から伝わり、
室町時代にそれが普及したので、
ゴマ料理の幅が一気に広がりました。

室町時代に書かれたとされる
『大草家料理書』には
鯛南蛮焼のつくり方に
ごま油の記述が残されています。

また、高野山には、
1200年前から伝わる
「ゴマ豆腐」があります。

「ゴマ豆腐」は、精進料理の代表ですね。


このように見ていくと、
他の地域と比較して日本はゴマを
薬ではなく食材としてとして
活用していたことが窺えます。

「世界の健康食」と絶賛される日本食は、
やはり「医食同源」を追求した先人の
大いなる遺産と言えるのではないでしょうか。

その２に続きます。


誠真堂鍼灸院
東洋史

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